炭水化物の食べすぎもやっぱり注意!

 これに関連して、もう一つ大事な注意点があります。

 脂質異常症がある場合、「揚げ物や炒め物などの脂っぽい食事を控えましょう」と指導されることがよくあります。

 ところが、LDLが高い場合にはおおむね妥当だと思いますが、中性脂肪が高い場合は、「炭水化物も原因だった」ということがあり得るのです。

 脂っぽい食事を控えているのに中性脂肪がなかなか下がらないという人は、むしろ炭水化物の量に留意する必要があるのです。

 医者でもこの点をはっきりと認識していない人が時々いて、中性脂肪が高い場合に、「本当に脂っぽい食事を控えているんですか~?」と不用意な発言をして、患者さんとの信頼関係にヒビが入ることがあります。

 このように、糖質には一筋縄ではいかない面もあります。

 では、そんな糖質を全く取らなかったらどうなるのでしょうか。

 最近では、「糖質制限」を厳格に守って、炭水化物をほとんど取らない生活を送っている人もいます。そういった場合、人体にはどんな影響があり得るのでしょうか。

 もともと人間の脳は、原則的にブドウ糖しか栄養素として利用できません。

 ですから、もしそのほかの栄養素からブドウ糖が合成できないのだとすると、糖質制限をすることで、脳は飢餓状態になってしまいます。

 ただ、これは一応、回避できます。ブドウ糖が枯渇した場合には、筋肉のたんぱく質などを分解して、ブドウ糖を作り出す「糖新生」というルートができるからです(図の「ピルビン酸」→「ブドウ糖」のルート)。

 厳格な糖質制限を推進する人たちは、「糖新生があるから糖質はまったく取らなくても大丈夫」と主張します。

 ただ、成り立ちからも分かる通り、糖新生は人体にとってあくまで非常手段。糖新生があるから糖質ゼロでも構わない、とするのは、やや乱暴な話のように感じます。

 3大栄養素は、それぞれ独自の流れを持っていて、互いの交通はないというイメージがあるかもしれません。けれど実は様々な合流ルートがあるのです。これを「栄養素の相互変換」と言います。

つまり下のような単純な図式ではないということです。

  • 炭水化物→エネルギー
  • 脂質→エネルギー、脂肪として貯留
  • たんぱく質→筋肉など肉体をつくる

 これはいたずらに複雑になっているわけではありません。人類の歴史において、それぞれの栄養素を、バランスよく取れる時期は、ほとんどありませんでした。つまり栄養素の過不足があった場合に互いをカバーしあえるよう発達した、極めて精緻なセイフティーネットがこの複雑な仕組みなのです。

 その特性を理解した上で適切にふるまうことが、取ろうと思えばいくらでも栄養素を取れる時代に生きる日本人にとって、必要不可欠なことなのです。

■参考文献
  1. Lie L et al. The Association of Dietary Fiber Intake with Cardiometabolic Risk in Four Countries across the Epidemiologic Transition. Nutrients. 2018;10. pii: E628.
  2. Silva FM et al. Fiber intake and glycemic control in patients with type 2 diabetes mellitus: a systematic review with meta-analysis of randomized controlled trials. Nutr Rev. 2013;71:790-801.
  3. Maki KC et al. Whole-grain ready-to-eat oat cereal, as part of a dietary program for weight loss, reduces low-density lipoprotein cholesterol in adults with overweight and obesity more than a dietary program including low-fiber control foods. J Am Diet Assoc. 2010;110:205-14.
本連載が1冊の本になりました。日本人の死因で最も多い「がん」を避けるためにはどうすればいいのか、マンガで分かりやすく解説しています

 日経ビジネスオンラインで好評の本連載が1冊の書籍になりました。
 書名は『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』。

 あなたは次のような「がん検診」の新しい常識に正しく答えられますか?

  • 肺がん検診、喫煙者ならば胸部レントゲン検査と、「〇〇」の検査を併用すべき
  • たった数年で前立腺がんの患者数が急増!?その背景にあった「〇〇〇検診」の影響
  • 胃がん検診、バリウムと胃カメラなら胃カメラに軍配! 理由は「〇〇がん」も検査できるから
  • 「大量に飲める人」と「弱いけれど少し飲める人」、肝臓がんのリスクが高いのはどっち?
  • ピロリ菌に感染する人が減ったことで、逆に「〇〇がん」のリスクは高まっている!
  • 大腸がんを調べる大腸カメラ、キツイのは検査よりその前の大量の〇〇だった
  • 検診を受けても見逃さないために! 乳がん検診はマンモグラフィーに〇〇〇を追加せよ

 本書では、現在も活動を続ける現役医師が、特技であるマンガを生かして、「日本一まっとうな」がん検診の受け方と使い方を解説します。

 肺がんや胃がん、大腸がんなど、日本人にとってメジャーな「がん」を見つける方法から、男性ならば誰もが気になる前立腺がんや前立腺肥大、ED(勃起不全)、若い女性にも広がっている乳がんや子宮頚がんについて――。

 日本人に多い10のがんを取り上げて、正しいがん検診の受け方、使い方を紹介。同時に、最近取り沙汰されることの多い「PET検診」や、少量の血液や尿などからがんを見つけるとうたう「血液がん検診」など、「がん検診」をめぐる最新のテーマについても、マンガを用いながら、分かりやすく解説しています。

 一冊読めば、あなたが「がん」や「がん検診」の怪しい情報に惑わされることは、もうありません。