中高生へのピロリ菌の除菌、必要性を見極めよ

 本当にピロリ菌の除菌が、胃がんを減らすかどうかは、除菌された膨大な人数を5年、10年と長期間にわたって経過観察し続けて初めて分かることです。現状では、そのデータが足りないために、ハッキリしたことが言えない状況です。

 ただ、ピロリ菌が胃がんの発生に非常に強く関わるのであれば、それを取り除くことによってリスクが下がる、と考えるのは自然でしょう。それを見越して、2013年からはピロリ菌の除菌が保険適用となり、積極的に行われるようになりました。

 胃がんが減っているのはそのおかげなんだ……と言い切れれば素晴らしいのですが、今のところは、そうではなさそうです。

 というのも、胃がんが減っているのはもっと以前からあった傾向で、そもそもピロリ菌の感染率が減ったことが主な理由でしょう。ピロリ菌の除菌によって、本当に胃がんが減るのかどうかは、今後の研究成果を注意深く見守る必要があります。

 そのような現状の中でも、中高生のうちからピロリ菌の感染をチェックをし、陽性ならば除菌を勧める自治体が増えてきています。

 私は、この方針に異を唱えるわけではありませんが、ただピロリ菌の除菌も無条件に安全というわけでは、ありません。下痢や味覚異常、薬剤アレルギーなどの副作用が出るケースもあるのです。

 しかもマンガで解説した通り、しゃにむに頑張らなくても、今後も自然にピロリ菌の感染率が減少していくのは間違いありません。中高生という非常に多感でトラブルを抱え込みやすい時期に、効果がはっきりしていない治療を断行することがベストなのかどうか、状況を見極めながら慎重な判断が必要なのです。

 今回は、胃がんの“原因”について解説しました。次回は胃がんを見つけるための検査である、胃カメラとバリウム検査のメリット・デメリットを解説いたします。

人口動態統計(厚生労働省大臣官房統計情報部)

Ford AC, et al. Helicobacter pylori eradication therapy to prevent gastric cancer in healthy asymptomatic infected individuals: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ. 2014;348:g3174.