まず大事なことは「環境を整備する」ということです。禁煙のためには、「タバコの煙をかがない」「タバコを目にしない」という環境を作ることが、何よりも肝心です。もし家族などの同居している人がタバコを吸っているのであれば、一緒に禁煙に挑戦することが前提条件になります。相手にも禁煙についての理解を深めてもらい、協力を仰ぎましょう。

 次に、禁煙によって節約できた金額を、エクセルなど表計算ソフトやスマホのアプリなどで記録していくこともオススメです。禁煙を手助けするようなアプリは無料でもいくつか手に入ります。努力の結果が金銭的なメリットとして確認できると、やる気が長持ちします。食べたものを記録するだけというダイエット方法がありますが、それと似たような理屈です。

 そして、ある程度お金が貯まったら、何か欲しいものを買うのもいいでしょう。収支の金額が減ると、「また貯めなきゃ!」と思って頑張れます。

 ただ繰り返しますがニコチンの依存性は高い。そのため日常生活の工夫や心がけだけで何とか乗り越えようとしても難しいケースもあるはずです。その場合は、禁煙補助薬を使うのが効果的です。現在のところ、利用可能な禁煙補助薬には下の3種類があります。

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 それぞれ特徴や注意点が違うので、医療機関や薬局で相談しながら、自分の体質やスタンスに合ったものを試してみましょう。

 いずれも効果がありますが、禁煙に手こずる場合は、どこかのタイミングでニコチンガムを試しておくのがいいでしょう。そしてその結果、たとえうまく禁煙できたとしても、残っているニコチンガムは捨てないで、バッグなどに入れて常に携帯するようにしましょう。

 そうすれば、いつか何かの拍子にタバコを吸いたくなっても、手元にあるニコチンガムを噛むことで気持ちを落ち着けることができます。「禁煙に失敗してしまった」という最悪の結果を避けることができるのです。ニコチンガムには、そんなゲートキーパーの役割を持たせましょう。

電子タバコは禁煙に役立つ?役立たない?

 では最近話題の電子タバコはどうでしょうか。

 残念ながら、世の中に広まってからまだそれほど時間が経っていないので、結論を出すために十分なデータが蓄積されていません。そのためはっきりとしたことは、まだ誰にも分からない、というのが正直なところでしょう。

 ただ、フィリップモリス社製の電子タバコ「IQOS(アイコス)」の煙を普通のタバコの煙と比べてみたら、ニコチンの量が普通のタバコの84%だったという報告はあります。仮に、そのほかの有害物質についても同様の傾向があるならば、普通のタバコを吸うよりはましと言えるでしょう。

 一気に禁煙することに抵抗がある人は、まずリハーサルの気持ちで電子タバコに替えてみるのも、一つの手かもしれません。ただし、ニコチンが少ないからといって、その分多く吸ってしまえば何の意味もありません。電子タバコはあくまで禁煙に至るまでのワンステップ、という認識が必要です。

 最後に、日本循環器学会、日本肺癌学会、日本癌学会、日本呼吸器学会が共同で編纂した「禁煙治療のための標準手順書」にはこうあります。

 再喫煙は失敗ではなく、貴重な学習のチャンス。

 再喫煙は禁煙に至るまでの通常のプロセス。禁煙に成功した人の多くは、成功までに少なくとも3~4 回の禁煙チャレンジを経験している。

 禁煙は経験すればするほど、上達する。

 何度か禁煙に失敗したからといって、落ち込んだり、必要以上に自分を責めたりする必要はありません。みんなが通る道なのだと思って、一歩一歩進んで行きましょう。

 次回からは「胃がん」や「胃カメラ」などについて、多くの人があまり知らない情報をお伝えしたいと思います。

【参考文献】

・厚生労働省・禁煙支援マニュアル
・Ikeda N et al. What has made the population of Japan healthy? Lancet. 2011;378:1094-105.
・Castelo-Branco C et al. Facial wrinkling in postmenopausal women. Effects of smoking status and hormone replacement therapy. Maturitas. 1998 ;29:75-86.
・http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_y/robert.pdf
・Reto A et al. Heat-Not-Burn Tobacco Cigarettes Smoke by Any Other Name JAMA Intern Med. 2017;177:1050-1052