あなたが「健診を受けなくていい」と言われたら

 割り振られたから、と律儀に健診を受けないでいて、10年後に研究者から「すみません、やっぱり健診を受けないグループの方が、死亡率が高くなりました」と言われても、時すでに遅し、です。誰も責任を取ってくれません。

 はっきり言って、そんなリスクを冒す理由はどこにもないでしょう。

 受けないグループに割り振られたとしても、もしくは割り振られたからこそ、健康に気を使ったり、こっそり違う場所で健診を受けたりしていてもまったくおかしくありません。

 そうなれば、両グループ間の差はほとんどなくなってしまうでしょう。

 例えば、抗がん剤治療のAとBの優劣を比べたい場合には、ランダム化比較試験は抜群の実力を発揮します。抗がん剤は医療機関で投与されるので、確実に投与されたことが分かるし、Aに割り振られた人がほかの医療機関でこっそりBも受ける、などと言ったことは、不可能ではないにせよ、まず考えなくていいでしょう。

 意図的なねつ造がない限り、その結果に疑義を差しはさむ余地はあまりありません。

 一方、健診問題は少し勝手が違います。その他の要素でいくらでも結果が左右されてしまうのです。研究として厳密に成り立つのかどうか、はなはだ疑わしいと思います。

 以上、少し専門的な解説になってしまいましたが、ここで私が強調したかったのは、確かにエビデンスは重要だけれども、それを確立するのに「向いている事柄」と「向いていない事柄」がある、ということです。

 偉い先生に「エビデンスがある」と言われれば、無条件に信じてしまいそうになりますが、決してそういうわけではありません。

 本来は、一つ一つの事柄を批判的に吟味していく必要があるのです。

 この点については、今後解説する予定の「食事に関するエビデンス」でもまったく同じことが言えるので、その都度、解説していきます。(次回に続く)

■参考文献
(1)Krogsboll LT et al. General health checks in adults for reducing morbidity and mortality from disease: Cochrane systematic review and meta-analysis. BMJ. 2012 Nov 20;345:e7191.

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