結局、メタボ検診は意味がある?ない?
最後に、もう1点大事なポイントは、メタボ健診に本当に効果があるのかどうかです。
厚労省の『標準的な健診・保健指導プログラム 平成30年度版』には、メタボ健診の開始からおよそ10年が経ち、その途中経過が報告されています。
どれだけメタボが改善しているかと思いきや、なんと実は「糖尿病患者数の増加」、「糖尿病予備軍の増加」、「20-60歳代男性の肥満者の増加」、などが認められているのです。
当然のことながら、「メタボ健診は状況を改善しておらず、有効ではない」という批判がほうぼうから上がっています。
ただし、繰り返しになりますが、メタボ健診が始まってからまだ10年です。
そもそも生活習慣病を発症する前の人を見つけて予防しようという試みなので、その結果、発症率が下がって死亡率が下がるかどうかを確かめるには、20年、30年と言ったスパンで観察する必要があります(次回の評価は2022年以降)。現時点で結論を出すのは時期尚早だと思います。
とは言っても、このままの状況で推移すれば、おそらく「メタボ健診には意味がない」という結論になるでしょう。
なぜかというと、厚労省の発表によれば、メタボ健診の実施率は48.6%、保健指導の実施率が17.8%に過ぎないからです(2014年度の実績)。
やはり健診するだけでは不十分で、引っ掛かった人にきちんと保健指導までできて初めて効果が期待できます。しかし実際には、指導が必要な人の5人に1人も受けていないのです。
保健指導は3カ月以上の継続的な支援が求められており、受ける方ももちろん、指導する側の負担も相当なものがあります。何らかの抜本的な改革を断行しない限り、メタボ健診は尻切れトンボになってしまう可能性があると思います。(次回に続く)
日経ビジネスオンラインで好評の本連載が1冊の書籍になりました。
書名は『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』。
あなたは次のような「がん検診」の新しい常識に正しく答えられますか?
- 肺がん検診、喫煙者ならば胸部レントゲン検査と、「〇〇」の検査を併用すべき
- たった数年で前立腺がんの患者数が急増!?その背景にあった「〇〇〇検診」の影響
- 胃がん検診、バリウムと胃カメラなら胃カメラに軍配! 理由は「〇〇がん」も検査できるから
- 「大量に飲める人」と「弱いけれど少し飲める人」、肝臓がんのリスクが高いのはどっち?
- ピロリ菌に感染する人が減ったことで、逆に「〇〇がん」のリスクは高まっている!
- 大腸がんを調べる大腸カメラ、キツイのは検査よりその前の大量の〇〇だった
- 検診を受けても見逃さないために! 乳がん検診はマンモグラフィーに〇〇〇を追加せよ
本書では、現在も活動を続ける現役医師が、特技であるマンガを生かして、「日本一まっとうな」がん検診の受け方と使い方を解説します。
肺がんや胃がん、大腸がんなど、日本人にとってメジャーな「がん」を見つける方法から、男性ならば誰もが気になる前立腺がんや前立腺肥大、ED(勃起不全)、若い女性にも広がっている乳がんや子宮頚がんについて――。
日本人に多い10のがんを取り上げて、正しいがん検診の受け方、使い方を紹介。同時に、最近取り沙汰されることの多い「PET検診」や、少量の血液や尿などからがんを見つけるとうたう「血液がん検診」など、「がん検診」をめぐる最新のテーマについても、マンガを用いながら、分かりやすく解説しています。
一冊読めば、あなたが「がん」や「がん検診」の怪しい情報に惑わされることは、もうありません。
Powered by リゾーム?