メタボ検診の強みは「分かりやすさ」

 1ページ目の表を見ると分かる通り、メタボの基準は、血圧、血糖に関しては、疾患の基準よりも「少し厳しい」ことが分かります。言い換えるとメタボ健診は、「生活習慣病」と診断される一歩手前の、発症リスクが高い人を選別する、という役目を持っています。

 ここが「メタボリックシンドローム」という概念の存在理由になります。

 つまりリスクの高い人を選別し、その人たちに集中的に食事や運動の保健指導を行うことによって生活習慣病、さらにはその先に待っている動脈硬化や要介護状態になることを、「未然に防ぐ」ことを目的としているのです。だからこそ診断基準が厳しい。

 さらに、メタボ健診が最も秀逸な点は、肥満の定義として、腹囲を採用していることです。

 なぜそれが秀逸かと言うと、腹囲がどこまで内臓脂肪の量を正確に反映しているかはひとまず置いておくとして、お腹が大きいかどうかは、パッと見てすぐに分かるからです。

 誰にでも、「この人お腹周りが大きいな、メタボかもしれないな」ということが直感的に判断できる。そして、生活習慣の改善なりなんなりでやせた場合には、その効果もすぐ視認できる。この簡便さと、問答無用の説得力が、メタボ健診のミソなのです。

 そして実際に、お腹が大きくて、血糖、血圧、脂質の値に悩んでいる人(特に男性)は、皆さんの周りにもたくさんいると思います。

 そういった、一番判りやすくて、一番効果が出やすい(肥満の解消が全体的な改善につながる)「大きなパイ」を優先的に押さえ、日本人全体の健康を底上げしましょう、というのがメタボ健診の存在意義なのです。

 ですので、「LDLは含まなくていいのか」とか「肥満じゃないけどリスク因子が多い人はどうするんだ」といった批判は、もっともではあるけれども、多少マトを外れているようにも感じます。

 様々なケースに目配りした網羅的なものを作ろうとすると、焦点がぼやけたり、運用が煩雑になったりしてしまいます。

 皆さんの周りにも、不幸にしてそういった経過をたどってしまったルールや成果物が、いくつかあるのではないでしょうか。

 本来の目的だけでは飽き足らず、複雑化、肥大化させてしまうというのは、日本人のDNAに刻み込まれた、逃れがたい習性の一つなのではないかと思います。

 さらに言い添えると、メタボ健診が定義以外のケースを切り捨てているわけでも決してありません。LDLも測定するし、肥満じゃなくても血圧などが高ければ、当然受診勧奨の対象になります。

 つまり、メタボは絶対視するようなものではなく、LDL高値や血圧だけ高い人などと並んで、大きな、そして分かりやすいリスク因子の一つ、と考えればいいのです。

 そこの立ち位置さえ明確にすれば、メタボの定義や健診の運用は、特に変える必要はないと思います。