前回(「メタボのあなた、無症状はとても危険です」)、内臓脂肪から様々な物質が分泌されて、メタボの状態をつくり出すことを解説しました。

 メタボ人口を減らすことは、日本人の健康を守るため、また要介護人口の増加を抑えるため、さらには日本の医療経済を健全にするために非常に重要なカギになります。

 そのために始まったのが「メタボ健診」ですが、メタボ健診は存在意義や施行方法、有効性について、様々な批判にさらされています。それは、どういうことでしょうか。

 まずメタボは内臓脂肪の量に注目しており、簡単な指標として腹囲が採用されたと解説しました。

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 内臓脂肪の面積が100平方cm以上になると要注意と考えられていて、それとほぼ相関するとされたのが男性は85㎝、女性は90cmだったのです(1)。

 ただこの値にそこまでの信頼性がないという批判は、メタボ健診の開始当初からありました。特に女性の90㎝は、「緩すぎる」という意見が非常に多いのです。

 ここでほかの国の基準と比べてみましょう。下の表は、世界中のメタボ健診(もしくはそれに該当する健診)で採用されている腹囲の基準です。

 日本の男性は中国とともに世界でもっとも厳しい基準になっていますが、日本の女性は実は、世界で最も緩い基準になっています。アジアはもちろん、ヨーロッパやアメリカよりも、どこよりも緩いのです。これは、「意外」というほかありません。

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 第31回目(「ええ! 心筋梗塞や脳卒中でも意外と生き延びる?」)で解説した通り、日本の女性の平均寿命と健康寿命の差(つまり、要介護状態の期間)は、12.40年と長いことが分かっています。

 もちろん、その原因がこの腹囲の基準の緩さにだけあるというつもりは毛頭ありません。

 しかしその一方で、診断基準を設けるということは、基準以内の人にお墨付きと安心感を与えることにもつながりかねません。「自分は問題ないんだ」と思って安心していると、水面下で生活習慣病が進行している、ということは十分にありえます。

 女性の腹囲の基準については、確かに再検討が必要かもしれません。

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