平均寿命が一番長い長野県…だが安直には喜べない

 一方で「長寿だ万歳!」と単純に喜ぶことはできません。

 当然、長く生きるならば、その中身が大切なわけですから。単に長く生きただけでなく、健康でやりたいことを実現できる期間がどれぐらいあったのか、ということが大切なのです。

 「生きていた期間」である「寿命」と対比して「日常生活に制限のない期間」のことを「健康寿命」と呼びます。

 「制限のない」を厳密に定義することはなかなか難しいのですが、やや大雑把に言えば、「要介護状態ではない」ということです。

 平均寿命と健康寿命は必ずしもパラレルの関係にはありません。例えば長野県の平均寿命は、男女ともに非常に高いことが知られていますが、健康寿命はどうでしょうか。平成22年度都道府県別生命表によると、平均寿命は次のようになります。

男性
長野80.88歳
滋賀80.58歳
福井80.47歳
熊本80.29歳
神奈川80.25歳
女性
長野87.18歳
島根87.07歳
沖縄87.02歳
熊本86.98歳
新潟86.96歳

 これを見ると、長野県が男女ともに1位なのですが、健康寿命に着目すると、平成22年度は次のようになります。

男性
愛知71.74歳
静岡71.68歳
千葉71.62歳
茨城71.32歳
山梨71.20歳
女性
静岡75.32歳
群馬75.27歳
愛知74.93歳
沖縄74.86歳
栃木74.86歳

 順位は激しく入れ替わり、まったく違った風景が見えてくるのです。

 次に、順位はさておき全国の平均値はどうでしょうか。

 厚労省の資料によると、平均寿命と健康寿命(日常生活に制限のない期間)の差は、平成25年で男性 9.02年、女性12.40年となっています。ここで意外と感じる人も多いと思いますが、女性は平均寿命が長いのに、実は健康寿命は相対的に短いのです。このパラドックスも今後の重要な検討課題ですが、回を改めて解説したいと思います。

 いずれにせよ、大半の人が人生の締めくくりの段階で、10年前後、不本意な生活を強いられているのです。現状のまま人生100年時代が到来すれば、この期間はそれに比例して長くなってしまうでしょう。

 ここで、私たちを取り巻く課題と目指すべき方向性が明らかになってきます。やはり、最も重要なことは、単に寿命を延ばすことではなく、平均寿命と健康寿命の差をできるだけ少なくすることなのです。しかるのちに、並行して伸びていけばベストでしょう。

 人生100年が災いになってしまってはいけません。ではそれを避けるためには、つまり健康寿命を延ばすためには、何が必要でしょうか。次回以降、詳しく解説します。

【参考文献】
健康寿命の指標化に関する研究(健康日本21(第二次)等の健康寿命の検討)(平成27年度分担研究報告書)
健康日本21(第二次)各目標項目の進捗状況について
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