画像検査で分かるもの以外は分からない

 ここで強調したいのは、「画像検査の結果の方が正しい」ということでは全くなくて、「画像検査で分かるもの以外は分からない」ということです。

 実際に、画像検査で見つからないようなごくごく小さな病変が育っているのかもしれません。それも、十分にありえます。けれど、画像検査でも病変が見つからなければ、医師側は「がんはない」と言うしかないのです。

 もちろん、画像でがんがどこそこにあるということが確認できなければ、手術などで切除することもできません。

 ところが、がんはないと診断された数年後に、もし進行がんが見つかって、さらには完治できるタイミングを逃していようものなら――。

 受診者、医療者を巻き込んだ深刻な問題に発展する可能性があることは、十分ご理解いただけると思います。

 そのがんは、血液がん検診の時に小さすぎて画像検査に映らなかっただけかもしれないし、実際にがんは存在しなくて、その後で急速に育ったのかもしれません。しかし、それがどちらかなのかは、世界中の誰にも分からないのです。

 誰も悪くないのに、すべての人に不幸をもたらす結果になってしまいます。

 繰り返しになりますが、「画像検査が100%正しい」ということでは、全くありません。

 しかし画像検査を判断基準にするということは、「視認できるもの以外分からない」という観点から、実は、真の意味で妥当なことなのです。

 血液がん検診が実用化されれば確かに便利ですし、今までがん検診を受けていなかった人が受けてみようと思うなど、様々なメリットもあるでしょう。

 ただ一方で、不幸なトラブルを起こす可能性があることにも、十分に気を配る必要があるのです。

 「血液でがんを早期に見つけるんだ!」とあまり気負いすぎずに、「がんのリスクの高い人を見つけるために受ける」程度に考えた方が、すべての人にとって有益なのではないでしょうか。

(参考文献)
Almqvist EW,et al. A worldwide assessment of the frequency of suicide, suicide attempts, or psychiatric hospitalization after predictive testing for Huntington disease.
Am J Hum Genet. 1999;64:1293-304.