PET検査で“見逃される”がんもある!

 「PET」とは、「Positron Emission Tomography」の略です。

 PET検査では、まず「放射性同位元素がくっついたブドウ糖(FDG)」を体内に注射します。がん細胞は活発に増殖しているため、栄養素であるブドウ糖を正常の細胞よりもたくさん取り込みます。

 同じように、FDGもがん細胞により多く取り込まれので、体内分布に差が出ます。その濃淡を映像化するのがPET検査です。

 ただし、PETだけだと大抵はボンヤリとした画像しか得られません。そこでPETにCTかMRIを組み合わせて、検査の精度を高める必要があります(下の2点の写真参照)。通常PET検査というと、「PET+CT」か「PET+MRI」のことを意味します(本稿でもそのように使います)。

PET胸部正面像(甲状腺がん)
PET + CT胸部正面像(甲状腺がん)

 一見すると、なんて素晴らしいんだと思いますが、現実にはなかなか理論通りにいきません。

 がんの性質によってはFDGがうまく集積しなかったり、正常臓器に集積してしまったりすることがあるのです。ではPET検査の精度はどれぐらいと報告されているのでしょうか。

 ある施設は約9年間、延べ1万8919人(複数回受診あり)がPET検査を含むがん検診を受けたところ、見つかった総計204件のがんのうち、PET検査陽性が104件、陰性が100件でした。

 つまり、すべてのがんのうちの約半分は、PET検査でも見逃されているのです。

 これは大変微妙な結果です。診断能力があまり高くない、というよりも、PET検査は臓器によって得意・不得意があるのです。

 では、どういうケースでPETの診断能力が下がってしまうのでしょうか。

PET検査が有用ながんとそうでないものがある

 前述したように、PET検査ではFDGという特殊なブドウ糖を使用します。もし糖尿病で血糖コントロールが不良な場合(つまり血糖値が高い場合)、腫瘍は身の回りにふんだんにある普通のブドウ糖を取り込めばいい。その結果、相対的にFDGが集積しづらくなり、診断能力が低下してしまいます。つまり糖尿病の人はPET検査を受ける意義が減ってしまうのです。

 また、もともとブドウ糖をたくさん取り込んでエネルギーにしている脳や、FDGの排泄経路である腎臓、尿管、膀胱には、病気がなくてもFDGが自然に集積します。そのため、集積が見られたとしても、それが病気によるものなのかどうかを判断することができません。

 ほかにも胃や大腸などの消化管、肝臓などは正常でも比較的集積しやすいと言われています。

 そのため臓器によってPET検査の有用性は変わってきます。FDG-PETがん検診ガイドラインによれば、PET検査が「非常に有用」なのは、頭頸部がん、甲状腺がん、悪性リンパ腫と報告されています。

 特に、甲状腺がんはPET検査で見つかる頻度が一番高いがんです。ただし、前立腺がんと同様に、ラテントがん(ゆっくり成長して寿命に影響しないがん)の割合が高いので、PETで診断された甲状腺がんが本当に治療すべきなのかどうかは、慎重に見極める必要があります。

 次に、「有用性が高いと考えられる」のは肺がん、乳がん、膵がん、大腸がん、卵巣がん、子宮体がん。「有用性は高くない」のは、食道がん、肝臓がん、胃がん、前立腺がん、子宮頸がん、腎がん、膀胱がんと報告されています。

 がんの名前をズラズラ並べてもピンとこないので、部位別のがんの罹患率とPET検査の有用性を照らし合わせてみましょう。