乳腺エコー検査も併用しよう!

 そして困ったことに、日本の場合は40歳代後半に乳がん罹患のピークがあるのです。

 つまり、「アジア人で若年層」という高濃度乳腺が最も多い層にがんのピークがあるという、非常にやっかいな状況に置かれているということです。

 では、マンモグラフィーの弱点をカバーするためにはどうすればいいのでしょうか。

 現状で最も有望なのは、「乳腺エコー検査」を併用することです。お腹や心臓のエコー検査と同様に、乳房に超音波を当てて、がんの有無をチェックすることができます。

 実際に、40代の女性にマンモグラフィーとエコーを併用することによって、早期の乳がんの検出率が上がったことが報告されています。

 ただし検出率が上がった結果、死亡率も下がるかどうかは、臨床試験が進行中でまだ証明されていません。厚生労働省の指針では、死亡率が下がらない限り、がん検診として認められないので、エコーは自治体の健診では原則的に受けられず、自費診療として人間ドックなどを活用する必要があります。

 以上を簡単にまとめると、「自治体で唯一認められているマンモグラフィーが高濃度乳腺に弱いこと」が、乳がん検診の最大の問題点です。これは間違いありません。しかし、それが本質ではあるものの、実はそれに付随する運用上の問題がもう一つ残っています。

 前述のように、乳腺濃度には個人差があり、4グループに分けることができます。

 しかし国の乳がん検診の指針では、マンモグラフィーの結果を「異常なし」か「要精密検査」のどちらかで通知するよう定めています。つまり、受けた本人の乳腺濃度がどのグループに属していたかは原則的に通知されません。ということは、たとえ「高濃度で見えづらかった」としても、明らかな問題が指摘できなければ「異常なし」に分類されるのです。実はこれが、乳がん検診の一番の盲点です。

 冒頭で述べた、「きちんと乳がん検診を受けていたのに、翌年に大きな進行がんが見つかった」というケースは、この通知方法に原因がある可能性があります。

 「異常なし」との結果だったので安心していたけれども、実は徐々に育っていた乳がんが、高濃度乳腺のせいで見えていなかっただけなのかもしれない。さらには、自分でも乳房にシコリがあることに気づいておかしいなとは思っていたけれども、マンモグラフィーの結果が「異常なし」だったから、様子を見ていて手遅れになってしまった、という人もいるでしょう。

 マンモグラフィーが高濃度乳腺に弱いのは事実であって、これはある意味どうしようもありません。

 しかしその通知結果が「異常なし」か「要精密検査」の2つしかないというのは、単なる運用上の問題です。そしてやはりミスリーディングでもある。

 本来ならば、受診者に「自分の乳腺濃度が4グループのどこに入るのか」、また「高濃度で見えづらければエコーを受けるオプションがあり得る」ことを説明すればいいだけです。簡単に改善できるはずなのに、なぜなぜそのようになっていないのでしょうか。

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