前回に引き続き、膵がんについて解説いたします。

 がんを遠ざけるうえで、一次予防(リスク因子を避ける)と二次予防(がん検診)は欠かすことのできない両輪です。 ただし、膵がんのように現状で二次予防が難しいがんは、相対的に一次予防のウエイトが大きくなります。つまり、発がんリスクをできるだけ減らすことが重要なのです。

 では膵がんのリスク因子には何があるかというと、次のようなものが挙げられます。

  1. がんの家族歴
  2. 慢性膵炎
  3. 肥満
  4. 糖尿病
  5. タバコ
  6. アルコール

 アルコールの回(「『適量のアルコールは認知症に良い』はウソ!」)で解説しましたが、②の慢性膵炎は、膵がんのリスクを8~13倍に上昇させます。そして慢性膵炎の原因の半分以上はアルコールです。

 つまり①の家族歴を除くと、上記のほぼすべての因子が、生活習慣に関わることになります。これは決して、悪いことではありません。むしろ改善、予防する余地があるということを意味していますから。

 では、それぞれの因子はどれぐらいリスクを上げるのでしょうか。報告によってバラツキはありますが、次のようなデータがあります。

  • 肥満 2.6倍
  • 糖尿病 1.9倍
  • タバコ 1.7倍
  • アルコール 1.2倍

 肥満、タバコ、アルコールは今までも出てきているので、ここでは糖尿病について少し解説しておきます。

 糖尿病は、インスリンの作用が不十分になることによって、慢性的に血糖値が上昇する疾患です。血糖値が高くなると血管が損傷され、様々な合併症を起こします。心筋梗塞、脳卒中、網膜症(失明のリスク)、腎障害(透析のリスク)、神経障害、EDなどです。血管は全身をくまなくカバーしているので、その分だけ合併症も多岐にわたるのです。

 

 そして、実は糖尿病にはもう1つ重大な合併症があります。それは、すべてのがんのリスクが平均して1.2倍に上がることです。

 「1.2倍」と聞くと、「それだけ?」と思うかもしれません。けれど、あるがん患者数が5000人で済むところが、6000人になってしまうのです。医療の世界では十分に重みのある数字と言えます。

 糖尿病ががんのリスクを上げるということはかなり重要な事実なのですが、残念ながら、医療者の中でもあまり認識されていません。対策の難しい膵がんへの影響力がより強い(リスク1.9倍)ので、十分な注意を払うべきでしょう。

 血糖値をコントロールするには、食事の管理と適度な運動が欠かせません。またその結果、肥満(リスク2.6倍)が解消されれば、膵がんの発症リスクをぐっと抑えることもできるでしょう。