北朝鮮、ロヒンギャ問題をどう見るか

自身も国際平和実現のための研究を長年続ける福富満久教授。取材の2日後には、住民投票を調査すべくイラクのクルド自治区へと飛んだ。(写真:北山宏一)

現在の国際情勢を見たら、新渡戸稲造はどう思うでしょうか。連日報道されているミャンマーのロヒンギャ難民問題についてどう考えるでしょう。

福富:ミャンマーのアウンサンスーチー氏と新渡戸稲造が重なって見えます。一般的には、スーチー氏は批判されています。ミャンマーの少数民族であるロヒンギャを軍部が弾圧するのをなぜ止めないのか、と。

 ただ、批判をするのは簡単だけれど、彼女のこれまでを考えないといけない。彼女は軍事政権下のミャンマーで、幾度となく弾圧されながらもここまできたわけです。民政に移行したとはいえ、ミャンマーの議会の3分の1はいまだ軍人で占められています。そのような状況で、軍部を怒らせれば、また軍事政権に戻ってしまう。逆戻りするのは避けたいわけです。

 スーチー氏も心の中では、軍部が弾圧するのを止めたいと思っているはずです。でも、軍部を刺激すれば、今までの努力が無に帰してしまう。

 自身の理想や主義と、それを許さない社会の中で、もがいている姿が新渡戸稲造と重なります。

北朝鮮問題についてはどう思うでしょうか。国際社会として、日本として、北朝鮮に対してどのような姿勢で臨むべき、と言うでしょうか。

福富:「対話路線でいくべき」と言うでしょうね。「原点はどこにあるのか、それを考えるべき」と言うと思います。原点を探ったうえで、国際社会は北朝鮮に対して一定の譲歩をする。「こういった支援をするから、核開発はやめよ」というような約束をするのです。

 石油を禁輸しても意味がないと思いますよ。北朝鮮は石炭が採れますよね。石炭から石油をつくることができるのです。「人造石油」と言います。びっくりでしょう。実はこれは、戦時中に日本やドイツがやっていたことなのです。追い込まれれば、このようなこともやる。だから制裁にはあまり意味がありません。

 私は、リビアが国際社会に復帰したやり方にヒントがあると思っています。アメリカが「テロで亡くなったアメリカの遺族に慰謝料を払えば、リビアの独裁体制には口出ししない」と約束したのです。それでリビアは国際社会に復帰しました。

 金正恩体制も自らの体制が崩壊することを最も恐れています。「体制には口を出さない」ことを約束し、全面戦争になるのを防ぐべきじゃないでしょうか。

でも体制を認めることは、その下にいる民衆を見殺しにすることです。

福富:その通りです。難しい問題ですよね。「全面戦争になるのを防ぐ」という実利をとるか、それとも、普遍的な人道主義をどこまでも取り続けるか。

 新渡戸稲造も悩むのではないのでしょうか。でも彼を見ていると、抜群の国際感覚がある。まずは実利をとり、当面の危機を回避すると思いますね。そのうえで、残された民衆のことを考えるのではないでしょうか。