日経ビジネス9月12日号特集「テレビ地殻変動 ネットTVが作る新秩序」では、世界の公共放送と比べ、ネット対応で大きく遅れているNHK(日本放送協会)を取り上げた。テレビ放送と同一内容の番組をインターネットにも配信するネット同時配信の実現には、テレビ放送の視聴を基本とした今の受信料制度を変える必要がある。だが、籾井勝人会長を中心としたNHKの首脳陣は内紛に明け暮れ、改革に前向きに取り組む姿勢は見えてこない。ネット対応の遅れは視聴者の不利益に直結する話だ。

 NHKの後ろ向きの姿勢に嫌気が差し、2013年に飛び出したのが、元アナウンサーの堀潤氏だ。堀氏は現在、市民投稿型ニュースサイト「8bitNews」を運営。開かれたNHKへの改革を、外から働きかけている。そんな堀氏に公共放送のあるべき姿について聞いた。

(聞き手は林 英樹)

堀潤(ほり・じゅん)氏
2001年立教大学文学部卒、NHK入局。岡山放送局で勤務した後、東京アナウンス室に異動。「ニュースウオッチ9」「Bizスポ」などに出演。2012年米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に客員研究員として留学。原子力発電所の事故を題材にした映画「変身」を自主制作した。帰国後の2013年4月に退職。現在は市民投稿型ニュースサイト「8bitNews」を運営する。
(撮影:的野 弘路、以下同じ)

今のNHKをどう見ていますか。

堀潤氏(以下、堀):公共財って使えるものですよね。図書館や市民ホールもそう。でも公共放送は違います。視聴者は見るだけで使えません。

 実は海外の公共放送は違うのです。市民が持ち込んだ動画を放送で流す「パブリックアクセス」という権利が認められています。米国にはCNNやABCなどのテレビ局と並んで、パブリックアクセス局のチャンネルがあります。僕は米国に留学した際、自主制作した映画をそこに持ち込んだらどうかと言われました。パブリックアクセスは米国だけでなく欧州や韓国、台湾でも導入されてきた権利です。

誰もが使えるNHKに

 公共放送という冠が付いている以上、NHKはみんなが使えるNHKであってほしいと思っています。だから僕は退職して、外からNHKを変えていこうと考えました。

NHKは公共放送という意識が薄いような気がします。

:受信料を支払っている視聴者一人一人のための放送局であるはずのNHKが、残念ながら政権の方を向いているように感じます。この10年間はメディアの変革期でした。ネットやSNSが普及して大きく様変わりをする中、政権から送り込まれたNHKの会長職はずっと非メディア系の企業人が務めてきました。これでは柔軟に対応できません。

 その間、中国国営放送のCCTVはネットを活用した海外向けのプログラムを手広く展開しています。アジア発の情報はすべてCCTV経由という事態になりつつあります。国益を考えると、日本からの発信力が弱いという状況でいいのかと思いますね。