買収されるわけではなく、対等なパートナーとして付き合う点でかつてとは違いますが、ネットがテレビ局の敵だった時代からすれば、早河会長の決断は隔世の感があります。

早河洋(はやかわ・ひろし)。テレビ朝日会長兼CEO。1967年中央大学法学部卒、テレビ朝日の前身、日本教育テレビに入社。報道畑を歩み、2009年、生え抜き初の社長に就任。2014年から現職(撮影:的野弘路)

早河会長:僕はだから、インターネットの世界というのは見えないものだと思うんですよ。例えば三木谷さんのビジネスとか、堀江さんのやったこととか、それらが見えないがゆえに、採算性とか成功の度合いも見えず、みんな逡巡して決断しにくいところがあったと思うんです。

 けれども、私は以前から、この種のものはスピードというのが絶対的な条件だと思っているんですね。だから、こういうものは合議制で決めるものではないし、会議であれこれ会社の方向性だとか中身だとかを協議するというのは、あんまり意味がないんじゃないかと思い、決心をしたというわけです。

 それに、あれはどうしますか、これをどうしますかと子細に詰めていくと、テレビ的な価値観が絶対に出てきます。テレビ的な価値観とネット的な価値観、2つがぶつかると、この話はたぶんつぶれるだろう、という思いもありました。

 だって、現実にテレビが退潮傾向という中で、「いや、テレビは絶対だ」と言って入っていくビジネス構想じゃないわけですからね。新しいものを生み出そうという提案ですから、それはのみましょうと。

早河会長を突き動かしたテレビ離れへの危機感

 早河会長が「退潮傾向」と話すように、じわじわと進む「若者のテレビ離れ」への危機感が早河会長にはあった。

 今年2月にNHKが発表した調査結果では、2015年に1日に15分以上テレビ視聴をした20代男性の割合が、5年前から16%減の62%と急降下した。内閣府によると今年3月末時点の単身世帯全体のテレビ普及率は92.2%。29歳以下の男性では約86%に低下する。

 決断の背景にはテレビ離れへの危機感もあったのでしょうか。

早河会長:29歳以下の男性のテレビ保有率が86%。これはものすごいことじゃないですか。若年層がだんだんテレビというものを買わなくなっているという。

 その層というのは車も買わないし、ゴルフもやらない。消費性向がだいぶ変わってきている層ですよね。特にうちなんかの場合は、ファミリー層をターゲットにしているテレビ局なので、わりかしシニア層は得意なんですけれど、ヤング層は他局よりも劣るところがあるんですよね。最近でこそ、だいぶ変わりましたけれど。

 そこの穴埋めと言っちゃ変ですけど、広告主が一番注目している、いわゆる「F1層」とか「M1層」という層がインターネットで取れるということであれば、テレビ朝日から見るとバランスが良くなる。という思いも、どこかにありましたね。