一昨年というと、ちょうどネットフリックスの独自の人気ドラマ「ハウス・オブ・カード」がエミー賞などを受賞し、躍進を遂げていた時期と重なります。定額制動画配信の風潮に逆行するような判断に乗ったのはなぜでしょうか?

早河会長:なぜ米国で定額制動画配信がはやったかというと、もともと米国は日本と違って、テレビを見るのにお金を払わなきゃいけないんですね。要するに「ペイテレビ」の文化が根付いていて、その料金は結構、高いんですよ。

 そこへ、自分の好きな時間に好きな番組をどこでも、しかも、従来のペイテレビより低料金で見られるサービスが登場した。ミレニアル世代を中心に自由さとコストが受け入れられ、ブレークしているという状況なんですね。

 もちろん、日本にも有料テレビは衛星を中心にありますが、基本的にはテレビは無料だということに慣れきっていますし、ビジネスの大本になる「集客」のためには、やはり無料がいいだろうと。

 藤田社長の中にも、いいコンテンツをそろえればユーザーがたくさん来て、広告に依存した無料配信という新しいサービスが勢いを増すという読みがあったのだと思うんです。しかも、倉庫に入っているコンテンツを引っ張り出すということではなく、多チャンネルでユーザーに見せる、示すというのがミソだと思います。

「テレビとネットの価値観がぶつかると潰れる」

 サイバーエージェントとテレビ朝日は配信会社とは別に、AbemaTV向けニュース専門チャンネルの会社も共同で設立している。テレビ朝日は50%を出資、地方系列局からのニュース素材の提供も含め、地上波とほぼ変わらない報道体制を敷く。一方、地上波と同じようなタレントを起用した独自のバラエティー番組の制作でも、テレビ朝日で長年、バラエティー番組を手がけてきたプロデューサーらが協力。全社一丸となり、新時代のネットTV局に懸けている。

8月28日に生放送された特番「業界激震!?マジガチランキング」のスタジオ風景。テレビで活躍するお笑い芸人のカンニング竹山氏や人気モデルの池田美優氏といったタレントが出演した(撮影:稲垣純也)

 かつて、テレビ局にとって「ネット」は敵だった。2005年に堀江貴文氏率いるライブドアがフジテレビを、三木谷浩史氏の楽天がTBS買収に動いた際は、いずれもテレビ局が徹底抗戦したことで、実現に至らなかった。その時代からすれば、テレビ局がネット企業と組み、ネットTVに本腰を入れたというのは大きな変化であり、前進とも言える。

 お話を伺っていると、全体の方針や企画はサイバーエージェントに任せ、テレビ朝日は実現のためにリソースを提供している、という印象です。

早河会長:(AbemaTVに携わるテレビ朝日の)主要メンバーは社内会議に毎週集めて、作業を点検しながら、私も助言はしています。けれども、あくまで藤田社長の指示を優先すべきだし、「藤田社長の話をよく聞ききなさい」というのが、口癖のようになっています。もう、藤田社長に全幅の信頼を置いていますので。

 藤田社長には、それがプレッシャーになっているかもしれませんが(笑)。