かつてコンプライアンス(法令順守)が声高に求められない時代は、「接待費を自由に使える」「天下り先を作れる」といった給料以外の“うまみ”が出世にはつき物でした。だから、出世を目指す人が少なからずいましたよ。でも今そんな不正をやってごらんなさいよ、すぐにクビだよ(笑)。

 日本の管理職は平社員と比べて給料も責任も大差がなく、以前に比べれば出世の“役得”もなくなった代わりに、皆が「偉い人」として奉り、「名誉職」にしている。大手電機メーカーやテレビ局の経営トップを見て分かる通り、大企業の社長はたいてい、ずいぶんと偉そうにしているよね。本来は社長も平社員も同じ立場で、ビジネスシーンという“戦場”での役割分担が違うだけ。「人間として“上”になりたい」といった考えで出世を目指すのは、極めてナンセンスでしょう。

管理職を狙うなら、そのうえでの覚悟について、宋さんはどう考えますか。

 正直に言って、管理職は「いい時」よりも「悪い時」の方が多い。でも、その悪い時に「どうやって結果を出すか」をとても厳しく問われる過酷な立場です。管理職がやるべき仕事は新しいことや改革だから、仮に部下6人が賛同してくれても残り4人は反対しますよ。

「いや、宋さん、私の部下は8~9人が理解してくれますよ」と言う人がいたら、その人は「これまでと同じことを今日もやろう」と言っているに違いない。半数近い反対派に負けずに推し進めていくことが重要で、その孤独感やつらさを我慢して乗り越えていかないといけないのです。気づいていない人が多いようですが、管理職は本質的には経営側の人間だから仕方ない。

 管理職だって自分に100%成功する自信があるわけではない。でも「失敗したら辞める」というくらいの覚悟が必要。その厳しさの対価が給料ですよ。

会社員人生における出世以外の目標とは?

日本の会社で出世を目指さないスタンスが合理的であるというなら、ビジネスパーソンは仕事に対してどう向き合えばいいですか。

 やるかどうかは別にして、現在の会社を出る可能性を意識した働き方をしてほしいですね。何かの統計で見たのですが、中国の若者の4割は「いつか起業したい」と思っているそうです。

 実際に起業できる人はごくわずかでしょうが、とにかくそういった気概を持っている。だから、中国の若者はスキルを身につけるために転職する。そして、どこの会社に行っても「そのプロジェクトをやってみたい」「あのお客さんに会わせてほしい」などと、仕事に積極的に関与しようとします。いい意味で、人のふんどしで相撲を取ろうとするのです。失敗? 全然気にしないよ、どうせ辞めるから。

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