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宋文洲さんは、成人後に来日して創業した会社を外国人として初めて上場させた経営手腕を持つ一方、舌鋒鋭い発言でも知られる。「出世を目指す若者が減っている」といわれる傾向について宋さんは、「極めて合理的」と完全擁護する。その真意は?

(聞き手:呉 承鎬/写真:稲垣 純也)

「出世しなくていい」はビジネスパーソン失格?

宋 文洲(そう・ぶんしゅう)
ソフトブレーン創業者。1985年に22歳で中国から来日し、北海道大学大学院に国費留学。28歳の時に同社を創業し、2000年に東証マザーズ上場、05年に同1部へ変更。06年に同社の会長を退任し、現在は経営コンサルタント、経済評論家として北京と東京を行き来する。工学博士。著書に『日中のはざまに生きて思う』(日経BP社)、『新版 やっぱり変だよ日本の営業』(ダイヤモンド社)など。

若者の出世意欲の低下を示す調査結果がいくつも出ています。

「出世しなくていい」という考えは、とても合理的だと思いますよ。私も、もし日本企業に勤めていたら出世なんて目指しませんね。

 そもそも管理職は問題が起きたら原因が前任者の時代にあっても、責任を押しつけられる「リスク職」。ろくに休日も楽しめない。部下に嫌われてでもしなければいけないこともあります。役職が上がるほど、リスクも増えるのです。しかし残念ながら、日本の会社では、給料はそれほど増えません。

 例えば、中国の課長の給料は日本の課長より低いですが、部長になれば日本よりも高くなる。もっと上の役職の取締役や社長になると、平社員の5倍ほど高くなります。中国に限らず、世界でもそれが普通で、だから優秀な人材が管理職に就くのです。

 でも日本では、社長ですら給料は同世代の平社員の3~4倍も受け取れないかもしれません。管理職の責任の重さ(リスク)と給料(リターン)のバランスが合っていなくて、ハイリスク&ローリターン。こんな状況で、誰が高いリスクだけを抱える管理職をやりたがりますか。「出世しよう」と考えない日本のビジネスパーソンは、賢いんですよ。

管理職でないと味わえない醍醐味もあるのでは?

リスクに“見合う”給料ではなくても、人やプロジェクトを動かしてやりがいを得たり、やりたかったことを実現したりする醍醐味があるのでは?

 やりがいとか自己実現とかいった話は「趣味」であって、「仕事」ではないよ! 管理職の「仕事」は「結果を出すこと」に尽きる。一にも二にも、三にも四にも結果がすべて。「仕事の醍醐味」なんて言っている場合ではない。

 趣味で人を動かしたら、うまくいかなくなった時に部下をいじめるようになる。趣味だから、リスクを負ってまで積極的にリーダーシップを取らないし、「人に嫌われてもいい」という覚悟の下での冷徹な判断もできない。