
「『出世しなくていい』と安易に言えてしまうのは、そう決めた自分の会社員人生がどうなるかを分かっていないから」。人事コンサルタントとして、100社以上の評価制度を設計してきた平康慶浩さんの指摘にドキリとさせられるビジネスパーソンは多いはずだ。
仕事と真摯に向き合って目標の地位を勝ち取り、やりたかったことに取り組む──。こうした働き方をやんわりと否定する風潮が広がっている。ただ、「出世を目指す、目指さない」がその後の人生に生み出す違いには、なかなか思いが至らないものだ。
出世を分岐点とする2つの道の“格差”は明白。特に「収入」は衝撃的とも言える違いになっている。40代前半の課長と平社員の年収差は大企業で405万円となり、実に1.7倍も開く。50代後半の部長と平社員を比べると、609万円、1.9倍に広がる。
年収にどれほどの価値を認めるかは人それぞれ。「管理職ほど忙しくなる」というデメリットもあり、出世を目指すかどうかは考え方次第だ。ただ、リアルなデータを我が事として見つめれば、“最終判断”は変わるかもしれない。
20年余で社長志望は「4割」減
2017年春に入社したビジネスパーソン1年生の出世意欲を調べると、課長以上の管理職を目指す割合は48%(日本生産性本部、日本経済青年協議会調べ)。これは現在の30代、40代が新入社員だった頃と大きく変わらない。ただし目指す役職は変化していて、出世の象徴である社長が減り、部長や課長といった「比較的手が届きやすい」と思えるポストを目指す人が増えている。



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