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「公私」の区別を明確に

 「自分の仕事が、その進め方も含めて『見える化』できる人はテレワークの利点を生かしやすい」

 こう語るのは、業務改善に詳しいコンサルタントの沢渡あまねさんだ。自宅などの静かな環境下で仕事に集中できるため、例えば、割り込み仕事で自分の業務が滞りやすい「プレーイングマネジャー」は、テレワークを上手に活用すべきだと沢渡さんは言う。

 ただし、注意すべき点は、「公私」の区別をしっかりつけること。自宅で仕事ができる気楽さから、メリハリがなくなり、かえって非効率になる場合も多い。「テレワークをフル活用できている人の共通点は、通常の出勤日と同じように『身支度』を整えてから仕事を始めていること。『仕事モード』に切り替えるためにも有効です」と、産業医の山田洋太さんは説明する。

 反対に、仕事に没頭できるあまり、上司や部下への連絡がおろそかになったり、オフィスで働く時よりも長時間労働になったりするケースもある。また、自己管理の下で、オフィスで仕事をする時と同等以上の成果も求められる。すぐ近くに相談相手もいないため、「ストレスマネジメントを含む健康管理にも気を配ることが大切だ」(山田さん)。

 いずれにせよ、消化すべき業務の事前確認や、業務の開始と終了の連絡など、上司との密なコミュニケーションを保つことがテレワーク成功の大前提となる。

利用申請を簡素化して後押し

「新しい価値創造に向けて、テレワークが促す多様な働き方は、まだまだ進化する」と話すNTTドコモ人事部ダイバーシティ推進室室長の本昌子さん(写真:竹井俊晴)

 実際に、テレワークの制度を全社員に推奨しているNTTドコモのケースを見てみよう。2010年に「育児・介護と仕事の両立」を目指して制度化されたテレワークはその後、14年からはダイバーシティーの一環として、多様な働き方を実現する制度の1つとして進化し続けている。現在、本社勤務の社員5600人のうち、約1000人がテレワークを利用する。「生産性向上を実現するために、管理職者にも積極的に活用するように勧めています」というのは、人事部ダイバーシティ推進室室長の本昌子さんだ。テレワークを上手に活用している人は、「普段の業務遂行も含めて、しっかり自己管理ができ、さらにコミュニケーション能力が高い人も多い。有能な管理職者も定期的に活用しているようです」(本さん)。

 テレワークの対象が全社員であるほか、例えば、帰省先の実家でも利用できるなど条件を緩和したり、申請手順をわかりやすくしたりしたことも、利用が進んだ要因だと本さんは説明する。

 並行して、都市圏にある4支店を「サテライトオフィス」として使えるように整備した。自宅では仕事環境が整えられない人にテレワークができるよう配慮したもので、OA機器も完備する「ビジネスセンター」のような使い勝手の高さを目指す予定だ。

 今後の課題は、テレワークによる生産性向上を、どのように数値化していくか。「検討すべき課題は多いですが、今は過渡期の段階。問題があれば1つずつ解決することで、働き方改革のいい事例になると考えています」(本さん)。