「金メダルの向こう側の景色はこんなものか」

虚しくなった?

 残念ながら、アマチュアスポーツがマスコミに大きく取り上げられるのは五輪シーズンだけです。ロンドン五輪では7人の日本人選手が金メダルを獲得しましたが、どれだけの人が全員の名前を覚えているでしょうか。「金メダルの向こう側の景色はこんなものか」と虚しさや悔しさを覚えたんです。

プロのリングに上がって何を感じましたか。

 そんな金メダルに縛られました。五輪金メダリストとしてリングに上がることに恐怖心が生まれたんです。世間からある程度認められた「金メダリストの村田諒太」という、自分が作り上げた偶像があって、負ければそれが崩れると思ってしまった。その恐怖心とひたすら闘っていました。

それが金メダルによる重圧やプレッシャー?

 そうです。プレッシャーの正体は、自分が作り上げた偶像や幻影です。多くの人は、「自分はこういう人間だ」「世間や会社の人たちからこう見られている」と考え、「失敗したくない」「信用を失いたくない」などと思ってしまう。僕も、不特定多数の人からこんなふうに見られていると思うわけですが、それは自分が勝手に思っているだけで、確定的なものではない。

 プレッシャーに押しつぶされそうな人は、プレッシャーを感じている理由がぼんやりしていることが多く、悪い結果になった時のことばかり考える。「なぜ自分はプレッシャーを感じているのか」と自問自答し、その正体を理解するだけでも少し安心するし、どんな考え方をすれば、ある程度対応できるかが見えてきます。マインドをリセットできれば、何とか押しつぶされずにいられます。

Ryota Murata’s History
1986奈良県奈良市生まれ
1999中学1年生の時にボクシング教室に通い始める
2002高校2年生の時に選抜・総体・国体の高校3冠を達成
2003選抜と総体を制して高校5冠を達成
2004東洋大学1年生の時に全日本選手権初優勝
2005キングスカップ銀メダル、アジア選手権銅メダル
2008引退し、東洋大学に職員兼ボクシング部コーチとして勤務
2009現役復帰。全日本選手権優勝
2010全日本選手権優勝
2011全日本選手権優勝
インドネシア大統領杯ミドル級(75kg)初優勝
世界選手権ミドル級(75kg)銀メダル
2012ロンドン五輪ミドル級(75kg)金メダル
2013プロボクサーに転向
柴田明雄選手にTKO勝
デイブ・ピーターソン選手(米国)にTKO勝ち
2014カルロス・ナシメント選手(ブラジル)にTKO勝ち
ヘスス・アンヘル・ネリオ選手(メキシコ)KO勝ち
アドリアン・ルナ選手(メキシコ)に判定勝ち
ジェシー・ニックロウ選手(米国)に判定勝ち
2015ダグラス・ダミアオ・アタイデ選手(ブラジル)にTKO勝ち
ガナー・ジャクソン選手(ニュージーランド)に判定勝ち
2016ガストン・アレハンドロ・ベガ選手(アルゼンチン)にKO勝ち
フェリペ・サントス・ペドロソ選手(ブラジル)にTKO勝ち
ジョージ・タドニッパ選手(米国)にTKO勝ち
ブルーノ・サンドバル選手(メキシコ)にKO勝ち
20175月20日アッサン・エンダム選手とWBA世界ミドル級王座決定戦を行い、判定負け
アッサン・エンダム選手との再戦が決定(10月22日試合予定)

次ページ 「結果を残せなければメンタルは強くならない」