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家計簿アプリ「マネーフォワード」は銀行の入出金やクレジットカードの履歴、レシート情報などを基に家計簿を作成。家計の管理・見直しに役立てられる。

 マネーブックからSNS的な要素を取り除いたのが、現在、個人向けに提供している自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」です。おかげさまで、利用者数は500万人を突破しました。振り返ると、お金の情報の「シェア」は、ちょっと早すぎたのかもしれない。ただ、今でもニーズはあると考えているので、またいつか再挑戦してみようと思っています。

実際、「起業は、そのほとんどが失敗する」

最初に始めたサービスが不幸にも失敗して、その後の方向転換は容易だったのでしょうか。

 現実的に結果が結果ですから、変えざるを得ない(笑)。

 失敗の原因って、大きく分けると2つあると思うんですよ。1つは方法論自体の問題。課題に対するアプローチの道筋が間違っていれば、目指す場所に到着するわけがない。もう1つは、努力の程度。絶対量が足りなかったり、もうひと踏ん張りが利かなかったりすれば、やはり結果は出ない。

 マネーブックの場合、利用者があれほど少なかったのだから、方法論が完全に間違っていたと受け止めるしかない。その点に迷いはありませんでした。

 失敗には仮説の検証という側面もあります。マネーブックの場合、「ユーザーは他の人の資産運用を勉強したい。そういうモチベーションがあれば、自分の情報もオープンにするんじゃないか」というものでした。仮説が間違っていたと判断したら、次の仮説検証に移ればいい。起業においては、失敗は当たり前ですから。

 起業の際には、マネックス証券の松本大社長(当時)からこう言われました。「起業はほとんどが失敗する」。

 とはいえ、そうした現実を頭の中では理解していても、実際に失敗に直面するとやはりかなりつらいんですけどね(笑)。

普通の人が普通にやっても普通の結果しか出ない

もともと、起業志向だったのですか。学生時代には、先輩と一緒に学習塾を始めたそうですが。

 学習塾は、無理やり引きずり込まれたようなもので。いわば「もらい事故」です(笑)。ただ、ビジネスの面白さを教えてくれたのはこの学習塾でしたね。

 社会人になった時点では、「いつか起業しよう」といった考えは全くありませんでした。現在当社で提供しているサービスも、マネックス証券内の社内起業の形で考えていたのですが、リーマンショックの影響で難しくなった。それで、マネックス証券から出資していただき、独立したのです。

 ただ、起業云々とは関係なく、ビジネスパーソンとしてどう成長していくかという点については、社会人になった当初からある種の危機感を持っていました。「プロとして通用するビジネスパーソンになって、新しい価値を作り出していきたい」という意識は強かった。そのために、何をすればいいのか――と。振り返ると、その危機感の結果として起業に行き着いたというところでしょうか。