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「やっていることを“前向き”に否定しよう」

 もしかしたら、「自分の部署・職種では、業務をどうやってGo Boldにすればいいのかが分からない」と悩む場合があるかもしれません。先日も、カスタマーサポートの担当者が相談に来ました。私は、「返信で書く言葉を、一言だけいつもと変えてみるのはどう?」とアドバイスしました。

 なぜなら、「より良いものに変える勇気を持つ大胆さ」がGo Boldの本質だと思うからです。仮に1%でも、毎日変えていけば5倍、10倍の“複利効果”が生まれてGo Boldにつながっていくはず。求められるのは「常に斬新なアイデアを出す」ことではありません。

 Go Boldを実践するために、社員の皆には「常識を疑う姿勢を意識しよう」「やっていることを“前向き”に否定しよう」と伝えています。状況は目まぐるしく変わり、1日として同じ日はありません。成功しているやり方でも、「よりベターなやり方」になるよう常に考えるべきでしょう。

 会社として、これだけ「Go Boldに仕事しよう」と社員を鼓舞している以上、ライフサイクルに伴うリスクへのセーフティーネットは会社が手厚く整備すると決めています。社員には“Go Boldな仕事”に安心して取り組んでほしいですから。「産休・育休中や介護休業中の給与100%保障」などの制度は、こうした考えに基づいて用意しました。

手厚く整備した人事制度は、まず経営陣が率先して活用し、社員が利用しやすい雰囲気を作るようにしている。上は執行役員VP of Engineeringを務める柄沢聡太郎氏が、育児休暇を取得した昨年の様子(当時は執行役員CTO)

 現在、社員のバリュー実践度はかなり高いと思っています。ただ、手を緩めた途端に下がるでしょうから、油断は禁物です。

 今後は「All for One」のさらなる強化に取り組むのが課題ですね。事業拡大に合わせて社員数が劇的に増えていて、社員同士のコミュニケーションは薄まりつつある。面識がない社員同士がつながる「シャッフルランチ」や「部活」といった試みをしていますが、まだやれる余地はあると思っています。

 私自身の課題も、社員一人ひとりの様々な“他人事”をどうやって“自分事”にして関わるか。大きなハードルですが、ミッション達成のために、バリュー実践にこだわっていくつもりです。 (談)

メルカリ以前の足跡 幼少期~20代
250人超のサークルをまとめた大学生時代 “第4のバリュー”は「神は細部に宿る」

 子供時代を振り返れば、小学生の頃からずっと、部活のキャプテンを任されていました。もともとは引っ込み思案でしたが、家が運動一家で私も運動神経だけは良かったものですから。それで小学3年生くらいから、クラスで目立つ存在になったんです。ほら、スポーツができる子は自然とクラスの中心になるじゃないですか。あれです(笑)。

 大学生時代はアルバイトはほとんどしていません。当時はやっていた“裏原宿系ブランド”の行列に並んで買った服をオークションサイトで売って、小遣いを稼いでいました。「将来はビジネスをやりたい」とぼんやり思っていたものの、インターン(シップ)にも行きませんでしたし。典型的な“意識低い系”です。

 自慢できることをあえて挙げれば、早稲田大学でテニスサークルの代表を務めて250人以上を束ねていたことでしょうか。サークルですから、参加は自由。でも運営する私はメンバーに参加してほしいから、あの手この手で活動を呼びかけるわけです。「どうすれば組織の皆がハッピーになったり、モチベーションが上がったりするか」を肌で学びました。「相手にどんなメッセージを伝えて、モチベートするか」という引き出しは、ひょっとすると一般的な経営者より多く持っているかもしれません。

 こうした“マネジメント”経験は、今に生きています。「仕事のプロフェッショナル性」は、現場の人の方が経営陣より絶対に高い。だから事業の成功には、現場を担う担当者のモチベートが重要です。もちろん、メルカリで大事にしているバリューへのコミットも、社員の皆のモチベーションが影響します。

新卒で超ハードなIPO担当に

 大学卒業後は、当時の大和証券SMBCに入社しました。配属された投資銀行部門は、扱う金額が大きくて戸惑いました。何せ「1」と言えば「100万円」の世界ですから(笑)。

 1年目から、ミクシィやディー・エヌ・エーなどのIT企業のIPO担当に。「新規上場」という難度の高い“山”を、経営陣と二人三脚で登る。こんなハードな業務を3年間担当しました。相手は経営のプロですが、IPOではこちらがアドバイザリー業務を果たす必要がありますから、プレッシャーはとてつもなかった。当時は本当につらかったですね…。

 そうした過酷な時期に、2つの素晴らしい言葉に励まされました。1つは直属の上司がかけてくれた「死ぬ気で細部まで手を抜かずに仕事をすれば、仮にミスしてもお客さんはおまえを守ってくれる」という言葉。もう1つは、ある経営者が教えてくれた「実現するまでやるだけ。難しくはない」という成功の秘訣です。

 「神は細部に宿る」「最後までやり切る」。当社が大事にしているバリューの「Be Professional」に通じる考えで、これが自分の大事な職業倫理観になっています。私だけの“第4のバリュー”と言えるかもしれません。(談)