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橋本健二(はしもと・けんじ)氏
早稲田大学人間科学学術院 教授
1959年石川県生まれ。1988年東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。2013年から現職。データを駆使して日本社会の階級構造を浮き彫りにする。また、趣味と研究を兼ねて「居酒屋考現学」を提唱。主な著書に『新・日本の階級社会』『居酒屋の戦後史』『階級都市 格差が街を侵食する』など。

 大量の非正規労働者が登場し始めたのはバブル経済末期の1990年頃からだが、その頃、まだ20歳前後の若者だった非正規雇用第1世代が今や50代前後に。そして、大学生の就職率が6割を切っていた"就職氷河期"の大卒者(70年代生まれ)の一部が非正規雇用のまま働き続け、あと十数年すれば順次60代に。彼らの中には年金を受給できず、生活保護を受けることが確実な人たちもいる。

 「日本はかつて『一億総中流』と呼ばれていた時代が長かったが、80年代以降、富裕層の所得税の引き下げなど格差を拡大する政策が取られてきた結果、これほどまでに激しく階層分化してしまったのです」(橋本さん)。

転落すると、抜け出せない

 たとえ現在、新中間階級や正規労働者階級に属していても、病気や親の介護などで一度会社を辞めてしまうと、アンダークラスから再出発せざるを得ないケースが少なくない。そして、いったんアンダークラスに転落すると、そこから抜け出すのは容易ではない。

 「アンダークラスは現時点では、929万人。日本の人口は減少するにもかかわらず、25年には1000万人を超える。アンダークラスの多くは子供を持たず"一代限り"の人が多いはずですが、企業が非正規労働者を求めるため、中間層の子供たちが新たにアンダークラスに流れ込む可能性が高い」と橋本さんは言う。

 アンダークラスの人たちを経済的に引き上げないと、社会全体としても大きな問題がある。例えば、社会保障費の増大や、犯罪増加のリスク上昇、また財政悪化により医療給付水準が低下し、国民全体の平均寿命が短くなる可能性も。