これからの人生100年時代を見据えると、「定年退職後の生き方」の重要性は今まで以上に高まる。「悠々自適に過ごせれば幸せ」。そう考えているビジネスパーソンは、『定年後』の著者である楠木新さんの声に耳を傾けてほしい。3年前の2015年に定年退職を迎えた楠木さんが語るリアルな体験は、意識を変えるヒントになるはずだ。今ならまだ間に合う。
(まとめ=日経ビジネス編集部 平田秀俊)
楠木 新(くすのき・あらた)
25万部を突破したベストセラー『定年後』(中公新書)の著者。その実践編となる『定年準備』(中公新書)を今年5月に上梓。2015年に定年退職した生命保険会社では人事・労務関係を中心に、経営企画、支社長などを経験している。

 定年退職してからの約1カ月間は、「1日中働きづめの生活」とのギャップで、圧倒的な解放感に包まれましたね。忙しく働く皆さんはうらやましく思うかもしれません(笑)。

 でも2カ月も経つと、失ったものの大事さに気づく自分がいました。「役割」「責任」「義務」。会社員時代は「正直、うっとうしい」と思う時もあったのに、「実はそうしたものに自分は支えられていたんだ」と実感しました。人間には一定の義務が必要で、「どんな"縛り"も必要とせず、悠々自適に過ごせる人」は少数派です。

 「人は"1人で"は生きられない」。この人間の真理は、振り返れば定年退職の10年以上も前に違った角度で気づいていました。私は47歳の時に会社生活に行き詰まり、体調を崩して長期休職した経験があります。その時に痛切に感じたのは、「個性や主体性の発揮は、他人がいて初めて成立する」という厳然たる事実。自分を見てくれている他人からフィードバックや評価を受けて初めて、「人は人として成り立つ」から、仮にボロカスに言われたとしても大変ありがたいわけです(笑)。

「退職後の生き方探し」の正解は?

 定年退職して何をするか。その探し方に正解はなく、自分自身で考えるしかありません。ただ、探し方のヒントはあります。それは「とにかく動く」こと。

 例えば、新たな働き口を探そうとする時に「行ったことはないけれど、ハローワークで仕事は見つからないから行かない」「体を動かす仕事は、やったことがないからやらない」と考えて動かない。こうした"頭でっかち"はもったいない。行動を起こせば思わぬ道が開けていたかもしれません。