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「お客様はおまえを守ってくれる」

 この自分史上最大の失敗の顛末は、新人の私についてくれたチューターが以前かけてくれた言葉が“真実”であると、図らずも証明することになりました。

 「死ぬ気で細部まで手を抜かずに仕事をすれば、仮にミスしてもお客様はおまえを守ってくれる」。先輩の言葉通り、クライアントの「大丈夫」という言葉に、本当に救われました。「社内の評価はどうでもいい。お客様のためだけに仕事しよう」という気持ちに完全に切り替わった瞬間です。

 この先輩は、私が思う「最高の上司」ですね。例えば、プレゼンの準備も絶対に手を抜かない。汎用的に使える資料のひな型があるのに断固として使わないし、私にも使わせてくれない(笑)。

 「お客様ときちんと向き合おうと思ったら、“汎用資料”でいいわけがない」が先輩の持論でしたから。ゼロベースでの資料作りは、言うまでもなく非効率です。でも、常に新しいアイデアを生み出す姿勢を叩き込まれましたから、すごく勉強になりました。

 しかも、「おまえが作れ」と一方的に指示するのではなくて、「一緒に作ろうぜ」と言ってくれる。「ここまではオレが作るから、その先はおまえが作ってよ。ヨーイドン!」と、私の気分を盛り上げてくれるから、「毎日、楽しくハードワーク」でした。

 仕事がデキる人は自分に制限を設けずに、積極的にどんどん進んでいく。先輩はその典型例でした。お客様への提案で勝つ内容と負ける内容の差は、それほどないケースがほとんど。ただ、“勝つ提案”は、担当者が徹底的に頑張っている。自分や周囲に上手に負荷をかけて、「ほんの少しの差」を生み出しているのだと思います。ちなみにこの先輩は現在、大和証券の出世頭。今でも定期的にお会いして、いろいろと学ばせてもらっています。一生頭が上がりません。