信念がチームを成長させた
2年、3年と一緒にプレーしていくうちに、最初は何も言わなかった周りの選手たちが成長し、だんだん意見するようになり、ドゥンガ選手と衝突することも多くなりました。でも、皆勝ちたいという目標は同じ。舌戦を展開するようになってから、明らかにチームは成熟したし、最終的には、ほぼ日本人だけでリーグ優勝を果たすことができた。言い続けることをやめなかったドゥンガ選手の信念や行動が、チームを成長させ、結果につながったのだと思います。
ジュビロ磐田で13年間チームキャプテンを務められましたが、自身では得意な役割でしたか?
いやぁ…。皆の前で挨拶しなければいけないのが、あまり好きではありませんでした。
高校のサッカー部時代にも主将を務めていて、チームメートに「もう、何やってるんだよ!」と文句ばっかり言っていたんです。すると監督から、「皆が萎縮するからガミガミ言うな」と注意を受けたことがあります。「ああ、そうか」と思い、それからあまり感情的にものを言わなくなりました。
Jリーグはプロ集団。プロなら自分で気づくだろうという思いもあったし、自ら発言するようなキャプテンではなかったと思います。
そういう時代を生きてきた
今はどんな組織のリーダーも、メンバーへの言葉の投げ方、接し方一つひとつに気をつける時代になりましたよね。世代に応じた適切な向き合い方もきっとあるんでしょう。それは大事だと思うんです。でも、何だろう…。「甘いな」という気持ちも正直あります。
例えば、「俺たちの時代は」から始まる年配者の助言を毛嫌いする若者も多いでしょう。でも、もし僕が若者にそんな態度を取られたら、「そういう時代を生きてきたんだよ!」と言うでしょうね。「文句を言われないだけの仕事やプレーを見せてみろ」と。
ただし、そう言い切るには、若者との信頼関係をしっかり築いて、先輩である僕がもがいて一所懸命な姿を見せていないと、伝わらないんだろうなと思います。
僕自身、キャプテンの役目を果たすために先頭を走ってきたというよりは、ただ自分の可能性を泥臭く突き詰めることばかりしていたんです。そんな背中を見てくれていた仲間が、後ろからついてきてくれたのかもしれない。それが、僕のキャプテンスタイルだったと思います。

(次回に続く)
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