その分、「ゴールを決めなければ」という責任が重くのしかかり、ゴールを外すことが多く、味方のパスをミスで失ったり反応できなかったりして、攻撃の流れを断ち切ることも少なくなかった。試合後は申し訳ない気持ちでいっぱいで、いつだって悔しかったですよ。

 「どんなパスにも反応できなければ、ポジションを他の選手に譲らなければいけない」。そんな課題や危機感を、周りのチームメートから教えてもらう日々でした。

 だから、得点王などのタイトルを獲得できたのは、チームメートのレベルが高かっただけ。もし、僕の代わりが高原直泰選手や前田遼一選手だったら、200〜300ゴールは軽く達成していたと思いますね。それぐらい周りからチャンスをもらっていたし、タイトルを取って驕らずにいられたのも、チームメートのおかげだと思っています。

「何が何でもボールに食らいつく」というスタイル

それが、常に全力でボールを追いかけ回すプレースタイルにつながった。

 記録を残せた理由として、1つだけ自分の強みというか信条を挙げるとしたら、やはり「何が何でもボールに食らいつく」ということだと思います。つまり、「偶然」を「必然」にしたかったんです。

 たまたまゴール前にいた選手が、偶然足もとに転がってきたボールをちょんと蹴って得点を挙げることを、「ごっつあんゴール」と言います。確かに、たまたまゴール前にいたら「偶然」のゴールですが、ゴール前に絶えず行き続けていたら「必然」のゴールになるわけです。その「必然」を生み続けることが、自分の役割や価値だと思っていました。試合で僕は、絶えずゴールに向かって走り続けられるかどうかのフィジカルと精神力の勝負をしていたんです。

 もちろん、ゴール前に何度も何度も走り込むのは疲れます。サボりたい時もあるし、サボっていた時もあると思います。だけど、人がやらないこと、人が嫌がることをやり続けないと、僕はプロサッカー選手としてピッチに立てないとも思っていました。

外国人の勝利への執念

 誰だってキレのあるドリブルで、華麗にゴールを決めるクリスティアーノ・ロナウド選手やリオネル・メッシ選手に憧れますよ。でも僕はそんなテクニックもスピードもなく、周りのサポートがあって初めて得点できるタイプだと自覚していた。だから、ディフェンスと駆け引きしながら、がむしゃらに突っ込むしかないですよね。

 自分が突っ込んだ結果、相手の陣形が崩れて味方がフリーになり、ゴールが決まるんだったらそれでいいし、僕の動きがチームに勢いを与えるスイッチになるならそれでいい。

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