実は、一匹狼ではない

 ビジネス分野に限りませんが、本田は仲間と一緒に、心躍るような目標に向かっていくのが好きです。一般の方だと、本田は一匹狼というイメージを持つ人が多いので意外に感じるかもしれませんが、「一緒にやろうぜ」と声をかけて仲間を増やしたり、組織を動かすことが大好きなのです。そして人を巻き込むのがとてもうまい。

 本田は報道されるイメージとは全く違って人の話を黙ってよく聞きますし、相手に対するリスペクトの念も強い。このため、本田と初めて会った時の私自身がそうでしたが、この男のために働こうと思わせる魅力があります。人を巻き込むために必要不可欠な、人心掌握力には長けていると思います。

 特に日頃、本田が信じられないような結果を出すのを目の当たりにすることが多く、社員は尊敬の念を持っているため、どうにかしてこの人の期待に応えなければという気持ちにさせられます。

たいていの判断は「GO」

 経営者としての本田がよく言うことは、「成功よりも成長に目を向けよう」ということです。サッカー同様に、ビジネスでも高い目標を掲げれば夢はかなわないこともある。しかし、そこに向かっていく中で確実に成長はするので、そこを見つめるようにしよう。前進を喜ぼうという趣旨です。

 実際、本田の掲げる目標はビジネスでもむちゃと言えるようなものが多く、スピード感へのこだわりもハンパではありません。未踏の領域へと進んでいくという哲学も持っているので、その事業が成功する確率も高いとは言えない。

 このため、本田とともに大きな世界を見たいと思っている私さえも、本田の提案に待ったをかけるブレーキ役になることがあります。だから、「小脇さんはドリーマーじゃないですね」と皮肉を言われたりするのですが(笑)。たいてい本田の判断は「GO」ですね。

 ただ、事業を進めていく過程で、中止したりする判断もやはり速い。軌道修正能力が高く、それはリーダーとして尊敬できる点です。

 先ほど申し上げたようなスクール事業や、サッカーのクラブ運営は会社の仕事ですが、本田が立ち上げた「KSK Angel Fund」は会社とは別の個人ファンド。本田としてはより速いスピードで判断したいので個人で行うことを選択しました。ドローン開発で注目を浴びている「Aerial Lab Industries」 など三十数社に出資しています。

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