働き方改革の御旗の下、国は、自由な働き方やスキルアップを目的に、副業・兼業の促進に向けた検討を進めている。副業・兼業は法的に禁じられているわけではないが、容認している企業はごく少数。その背景には、労使の双方に潜む法的リスクの存在がある。これらを放置したままでの“見切り解禁”では、深刻な労務トラブルを招きかねない。
現行ルールにおける問題点と解決の方向性について、安西法律事務所弁護士・倉重公太朗さんに聞いた。
(聞き手=日経ビジネスアソシエ編集部 米田勝一)
政府が2017年3月にまとめた働き方改革の実行計画で副業・兼業の推進が掲げられ、厚生労働省は“副業解禁”に向けて地ならしを進めています。一方、副業を容認している企業は少数です。その理由をどう考えますか。

さん 慶應義塾大学経済学部卒業。安西法律事務所所属弁護士。経営者側労働法専門弁護士。労働審判・仮処分・労働訴訟の係争案件対応、団体交渉、労災対応などを専門分野とする。
最近では副業・兼業を推進する企業も出始めていますが、容認例は1割強と全体的には極めて少ない。最大の理由は本業がおろそかになることへの懸念でしょうが、法的なハードルが複数存在することも、企業側の姿勢に大きく影響していると思います。
現状、副業を禁止する直接的な法規制は、実は存在しません。厚生労働省が示しているモデル就業規則が「抑止」の役割を果たしているのです。
モデル就業規則の中には労働者の順守事項として、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」との規定があります。あくまでモデル例なので法的拘束力はありません。ただ、企業が運用している就業規則の多くはこれをベースに作成されており、結果的に副業・兼業に対する“ブレーキ”として機能してしまっているわけです。
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