カップラーメンを木端微塵に

 長寿ブランドだけでなく、新商品でも日清の戦略は徹底されている。その代表例が2014年に発売した「カレーメシ」だ。お湯をかけるだけでカレールウが混ざったご飯が出来上がるという新ジャンルの商品である。

 その最新のテレビCMは、とにかく“大人”には理解不能といってよい。劇画タッチの展開で、カップヌードルを愛する昭和生まれ風のおじさんが、カレーメシのうまさに目覚めるという構成だ。

 カレーメシの女神みたいなものは何なのか。なぜ昭和が舞台なのか。突っ込みどころが満載だ。

 CMの最後には同社を象徴する商品であるカップヌードルを木端微塵に破壊して、こうアナウンスする。「メンよりメシ!」。

旗艦ブランドのカップヌードルをぶち壊す
旗艦ブランドのカップヌードルをぶち壊す

 深澤取締役はこう説明する。

「『カップヌードル』のブランドは広く浸透しているが、『カレーメシ』はまだ不十分。カップヌードルの高いブランド認知度を利用することで、新ジャンルをアピールした」

 そして演出の意味が良く分からないのは、日清の戦略でもある。深澤取締役は「理解不能であるからこそ、新ジャンルであることを訴えられる」と満足げだ。

 

 こうしたマーケティングが奏功したのか、カレーメシの販売は好調だ。カレーメシを含む「即席ライス群」の販売が2017年4~7月で前年同期比2.8倍に伸びた。

 日清は突っ込まれるために、とにかく“隙”や自虐的な要素を盛り込む。

 カレーメシの商品パッケージには「かきまぜると無駄にうまい」と、「無駄」という言葉をわざわざ入れている。過去に売れなかった商品を「黒歴史」と銘打って売り出すなど、自虐的なキャンペーンも少なくない。

 先ほどの「OBAKA'S UNIVERSITY」のCMの演出では、本社をレーザービームで破壊した。ちょうど正月休みの時期を狙ったもので、ツイッターで「本社がこのような状況となったため、弊社は本日より正月休みとさせていただきます」とボケた。

 こうした日清の打ち出しに対して、ユーザーはSNSなどを使って突っ込みまくる。ツイッターでも「狂っている」との“称賛”コメントが多く寄せられている。日清は何もしなくても勝手に商品の情報が拡散していく。同社はこれを、「スルメサイクル」と呼んでいる。噛めば噛むほど面白さが拡散するマーケティング、という意味だ。

 さらに、拡散している情報を次の商品やマーケティングに生かす取り組みもしている。「10分どん兵衛」というマーケティングはその典型例だ。日清が勧めてきた「どん兵衛」の食べ方は、お湯を注いで5分待つというものだった。だが、あるお笑い芸人が10分後に食べた方がおいしいことを訴えて、SNSでその情報が拡散していた。

 これに対して、日清は「世の中の多様性を見抜けなかった」と深く反省したと表明。「10分どん兵衛」というキャンペーンを発売し、ヒットにつなげた。

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