UUUMの市川義典執行役員は、インフルエンサーを活用したい企業が目立って増えていると指摘する(写真:竹井俊晴)

どのような形で、企業からの依頼は寄せられているのでしょうか。

市川:これは本当にケースバイケースですね。私は前職が広告会社のようなところでしたが、広告代理店を通じてというケース、クライアントから直接というケースが半々。広告会社の部署も営業局、プロモーション局、インターネットメディア局とありますし、クライアントも宣伝部、マーケティング部など様々です。

 例えば、営業販促であれば、ヒカキンや、はじめしゃちょー(編集部注:UUUM所属の人気ユーチューバー)の肖像を使って店頭の販促物を作るだとか、宣伝部であればメディア媒体と同じような扱いで、商品にまつわるキーワードを動画の中に盛り込んで製作するといったことがあります。お付き合いする窓口によって、その評価指標も当然変わってきます。

クリエイターが望まない契約は結ばない

企業の側としても、従来のテレビCMなどのマス広告と、活用の仕方は変わってきているのでしょうか。

市川:完全にマスと我々を使い分けている企業もありますね。マス広告とネットのインフルエンサーのプロモーションは設計時に異なるので、マスのプロモーションのイメージキャラクターと被らないようなコンテンツ作りは提案させていただきます。ただ、最近は従来のマスの予算を削って、インフルエンサーのプロモーション費に充てたいというクライアントが増えているように感じます。きちんと効果がある提案をした上で、2回目、3回目の取引につながるような営業を心がけています。

インフルエンサーの起用について、特に重視している点はどこでしょうか。

市川:それぞれのクリエイターが何をしたいのか、ということを尊重しています。例えば、食品や飲料といった消費材は広告契約の金額も膨れ上がりますが、それを取りに行くためにクリエイターが望まないような契約は結びません。これまでの芸能プロダクションとの大きな違いはそこでしょうね。いわゆる、マネージャーのような存在の社員は、我々は「バディ」と呼んでいますが、これも、クリエイターと一緒になって二人三脚で成長していこうという姿勢の表れです。

 契約関係でいうと、広告会社さんを最も悩ませる部分だと思いますが、我々は「競合排除」をしません。ある大手化粧品メーカーのCMに出たら、その期間は他社メーカーの宣伝には出ない。これは従来は常識だったと思いますが、それはクリエイターのマイナスにしかならない。あくまで本当にクリエイター自身がいいと考えるものについて、その商品の動画を作ってもらうことを徹底しています。

ただ、企業からの案件はどんどん増えています。断るケースもあるのですか。

市川:端的にいうと、ユーチューバーという存在を理解していただけない企業には、お断りをしていますね。通常の広告と同じような動画を望まれているのであれば、それは僕らとしてはお手伝いする意味はないでしょうと。一言一句このワードを言ってくれないと困るというケースでも、それは完全に視聴者からすれば「言わされている」状態です。視聴者がそれに気づいた時点で興ざめになると思います。その点をしっかりとご理解いただきたいとうことですね。

 僕からクライアントにいつもお願いしているのは、依頼をいただいた時に、クリエイターの動画を必ず2〜3個は見てくださいということです。クリエイターの特徴と明らかにかけ離れた動画は露骨に再生回数が下がりますし、逆も然りです。クリエイターは、自分のファンのことを一番良く分かっていて、こういうことを動画にしてあげれば喜ぶということを把握しています。それを尊重することは、クライアントと我々の双方がウィン・ウィンになることに関わりますから、きちんと提案しています。

業界が健全に成長していく上で、重要なことは何でしょうか。

市川:許諾の関係はまず大きいでしょうね。我々も非常に気をつけていて、撮影の許諾、写り込みの権利などはきちんとチェックしています。また、例えば化粧品であれば薬事法上、どのような表現であれば大丈夫なのか、必ず確認しています。クリエイターが好きなものを紹介するときはファンも喜びますが、キャラクターのIP(知的財産)や音楽の楽曲なども含めて、法令を遵守して正しく使うということは大事だと思います。

 さらに、当たり前ですが、何が通常の動画で、何がPR動画なのかを明確に分けること。我々としては、ビジネスとして受けている案件の動画には、提供表示という形で動画の冒頭に「提供○○社」という表示を3秒以上、必ず入れています。その辺りも含めて、世の中に良いものを発信していかなくてはならないと考えています。