8月30日、ある企業が東証マザーズに株式を上場した。多くの人気ユーチューバーを抱える、インフルエンサー専門のプロダクション、UUUMだ。初値がつかないほど投資家の注目を集めた同社は、現代の「インフルエンサー消費」を象徴している。日経ビジネスの特集「若者消費のウソ」では、そのUUUMに所属する代表的なユーチューバーの1人、関根理紗氏にインタビューした。約78万人(9月12日現在)のフォロワーを抱え、美容動画は若い女性の高い支持を誇る。

 特集では、企業がインフルエンサーの影響力を活用しようとする動きが広がる一方、その「バブル」のような状況や、どのように企業が向き合うべきかという観点でも課題を提示している。取材班は今回、関根氏本人と、UUUMのマーケティング戦略を担う市川義典執行役員に話を聞いた。消費者や企業とどのように向き合うべきか、業界の課題はどこにあるかといった疑問をぶつけてみた。

<b>関根理紗(せきね・りさ)氏</b><br />普段は看護師として働きながら、2012年からユーチューバーとしての活動を開始。特に美容動画の人気が高く、「雑談しながらメイク」「フェイスパックレビュー」などが代表的。親近感のある気さくなキャラクターで、若い女性を中心に幅広い支持を集めている。美容系以外では、女子が気軽にできるゲームタイトルの実況動画なども手掛けている。(写真:竹井俊晴)
関根理紗(せきね・りさ)氏
普段は看護師として働きながら、2012年からユーチューバーとしての活動を開始。特に美容動画の人気が高く、「雑談しながらメイク」「フェイスパックレビュー」などが代表的。親近感のある気さくなキャラクターで、若い女性を中心に幅広い支持を集めている。美容系以外では、女子が気軽にできるゲームタイトルの実況動画なども手掛けている。(写真:竹井俊晴)

今や美容系ユーチューバーとして高い人気を誇る関根さんですが、活動を始めたきっかけについて教えてください。

関根理紗氏(以下、関根):私は2012年から活動を始めたのですが、当時はまだ「ユーチューバー」という言葉も一般的ではなく、それまではミュージックビデオを見るといった使い方しかしていませんでした。ただ、自分の興味がある関連動画に、個人でユーチューブに動画を投稿している人たちもいることに気づいて、面白いなと思ったのが最初ですね。

 その頃は社会人1〜2年目で、職場と家の往復という生活はつまらないなと感じていた時期だったんです。何か始めようと思った時に、趣味の一つとしてやってみようかという軽い気持ちで始めたのがユーチューブでした。

美容系の動画は最初から取り組んでいたのですか。

関根:最初は全然関係ない、コンビニエンスストアで買ってきたスイーツなども動画にしていたんですが、自分の興味があることって何だろうと考えた時に、ヘアアレンジやメーキャップを扱うようになったという感じですね。今私の動画を見てくれている子たちと同じように、私自身もユーチューブでメーキャップの動画などを見て勉強していたんですよ。

 当時はメークを扱っている人も、sasakiasahiさん(編集部注:UUUM所属の人気ユーチューバー)とか一部の人だけで、日常使いができるメークの動画というのはそれほどなかったんです。だから、私としては自分が色々と勉強したり、試したりしている様子を動画で撮影して、「日記」のように残せたらいいな、という思いがありました。

 それから、機材を良いものに変えたり、撮り方などを工夫したりするようになっていったという流れですね。他のユーチューバーとも交流ができ、良い部分を取り入れていくようにしました。始めてから半年少し経った頃から動画を見てくれる人がだんだん増えてきて、コメントがつくようになった。手書きのファンレターをいただく機会もあって、そうした動画の向こう側の人たちとつながることができるようになった。それがすごく嬉しかったですね。

次ページ 60歳ぐらいの人からファンレターも