騒動の前、ヒカル氏はイベントに出演し大歓声を浴びていた

「日本一の個人」を目指すと語っていたヒカル氏(写真:的野弘路)
「日本一の個人」を目指すと語っていたヒカル氏(写真:的野弘路)

 特集でも触れたように、このVALU騒動が明らかにしたのは、インフルエンサーであるヒカル氏の影響力の大きさと、その立ち位置の危うさだ。2016年3月にユーチューブで自身のチャンネルを開設し、約1年半で約250万人のフォロワーを獲得(9月8日現在は約232万人)。そして、8月の騒動以降、わずか数週間で表舞台から姿を消す事態となった。

 なぜ彼はこれほどの毀誉褒貶を経験したのか。

 今から約1カ月前の8月7日午後、取材班は東京都港区の六本木にある大手インターネット企業、DMM.comの本社を訪れていた。オフィス内のイベントスペースには高校3年生~22歳の若者が約300人集まり、あふれんばかりの熱気に包まれていた。この日開催されたのは、ヒカル氏と、彼が所属するインフルエンサー専門プロダクションのVAZ(東京都渋谷区)、中卒や高卒の若者の就職支援などを手がけるハッシャダイ(東京都渋谷区)が主催した、「非大卒者向けのキャリアイベント」だ。

 ヒカル氏はイベントの顔として、5日間のイベント期間中たびたび登壇。彼が登場するたびに集まった女性の参加者からは「かっこいい!」といった悲鳴のような歓声が上がった。会場の入り口にはヒカル氏ら人気ユーチューバーの原寸大の立て看板があり、その脇で自撮りする女性の参加者もたくさんいた。まるで、アイドルのコンサートのようだった。このイベントにはリクルートライフスタイルやネオキャリアといった、大手企業もスポンサーや協力企業として参加。ヒカル氏の影響力の大きさを物語った。

 1週間後の8月13日。取材班はまたもヒカル氏に会うため、埼玉県所沢市で行われたオフ会も取材した。オフ会には朝から夜までひっきりなしにファンが訪れ、ヒカル氏は1人数分ずつ対応していた。ヒカル氏の名前は以前から知っていたものの、これほどの人気ぶりとは…。取材に訪れた記者は正直、驚かされた。

 「最近の中高生はテレビよりもスマホの視聴時間の方が長い」「朝学校で話題になるのは昨夜のテレビではなく、昨夜のユーチューブ動画」――。

 今回の特集では、取材を進めれば進めるほど、これまでの企業の常識では捉えきれない現代の若者の姿が浮かび上がってきた。「最近の若者はモノを買わない」「若者にどうPRしたらよいのか分からない」……。若者の消費動向をつかめず苦悩する企業が頼みにするのが、ユーチューバーやインスタグラマーなどのインフルエンサーだ。自社の商品をPRしてもらおうと企業が群がり、まるで「インフルエンサーバブル」とでも言うべき現象が起こっている。

 そして今年に入り、そのど真ん中に陣取っていたのがヒカル氏だった。イベント終了後のインタビューでは、「日本一の個人になりたい」「僕、めちゃめちゃ面白いと思うんですよね」と、「ビッグマウス」とも自信過剰とも取れる言葉を連発。一方で、「人気商売というのは水もの。自分の人気はいつまで続くか分からない」という心情も吐露していた。

 ヒカル氏が話した内容とは……

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