「ラグビーワールドカップ2019や東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて、建築費が高騰しています。いずれホテルの耐震工事をやらなければならないのですが、建設業界の繁忙が一段落する2023年頃を考えています」

 そうなると、ホテルは長期間営業できない。

 「一度にいろんな負荷がかかると良くないわけです。それまでに、食品事業部が稼ぐ体制を用意しておく。本館が稼ぐようにしておく。そうすれば、ホテルが休業している間はカバーできます」

 本館建て替えには10億円近くかかるが、重慶飯店のブランド力は高まるだろう。それが地方都市にも波及していく。都内に構える「重慶飯店 麻布賓館」にも好影響を与える。重慶厨房のフランチャイズにもプラス効果を生む。食品事業本部のブランディングにもつながる。それを見越してのタイミングだったのだ。

 「こういったビジネスモデルを持つ企業は横浜中華街にはありません。いろいろ考えるのが経営トップとしての私の役割であり、ライフワークなんです」

経営には短期、中期、長期の視点が必要

 龍門グループのこれからの姿を、宏道はいつも考えている。

 「経営には短期的視点、中期的視点、長期的視点が必要です。ごちゃまぜにしてはいけない。それぞれストラテジーが違う。それぞれの時間軸も違う。企業として生き残っていくには、これらのバランスをうまく取らないといけないんです」

 重慶飯店の新しい歴史が、もうすぐ始まる。

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『家業から100年企業へ
重慶飯店が年商70億円の龍門グループになれた理由』

 横浜中華街で中華料理店「重慶飯店」を創業、1981年からは宿泊施設「ローズホテル横浜」を経営するなど、事業を拡大している龍門グループ(横浜市)。その創業者である李海天、呉延信夫妻から経営のバトンを受け取った息子の宏道、宏為がどのように事業を発展させ、次の世代につなごうとしているのか――。そこには家業から企業への“脱皮”があった。多額の借金を抱えたホテル事業の立て直し、フランチャイズ事業への新たな挑戦などの取り組みを支える経営理念とノウハウを、詳細なエピソードとともにまとめた一冊。