そして事業を承継できることがいかに恵まれているかを伝えたいという。

 「ここにはブランドがあるんです。義父母がつくった、間もなく60年を迎えるブランドです。それは、一生を懸けるに足るブランドだと思います。これからも、社員が楽しく、誇りを持って働ける会社にするために、やるべきことはたくさんあります。彼女の賢さと意志の強さを、みんなのために使ってほしい。生意気だと思われてもいい、原点がしっかりしていれば」

 宏道は、父の李海天という創業者の凄さを、今改めて感じている。

 「父は経営を全部、私に任せたんですよ。それは、ものすごいことだと思っています」

今、重慶飯店本館を建て替える理由

2018年10月10日にグランドオープンする重慶飯店本館。7階建てで、創業者を偲ぶプライベートダイニングルームも設ける
2018年10月10日にグランドオープンする重慶飯店本館。7階建てで、創業者を偲ぶプライベートダイニングルームも設ける

 横浜中華学校の1~2階にあった重慶飯店別館は、2018年7月末に閉館した。ちょうど50年、李海天が結んだ賃貸契約が切れる時期だった。オーナーからも土地の返却を求められた。

 別館の閉館に寂しさがなかったわけではないが、幸いでもあった。宏道は言う。

 「重慶飯店本館の建て替えをしたかったんです。建て替えにはお金がかかります。別館の契約を終わりにしたい、という申し出は渡りに船でもあったんです」

 重慶飯店本館は17年3月31日で営業を終了し、取り壊しを始めた。狭い路地が多く、観光客が絶えない横浜中華街での建て替えは極めて珍しい。しかも、建て替えが終わるまで売り上げはない。相当なリスクだ。

 しかし、そのリスクを負ってでも、建て替えておきたいと考えたのだという。

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