「特にフランチャイズビジネスは、未開拓市場なので面白いと思うんです。コックレスシステムのようなチャレンジをやっていけたらいいと思ってます」

 財務部長の松澤信太郎にとって、大きな問題なのが借入金の存在だ。

 「僕が勤めている間に片付く問題ではないと思っています。次世代には少しでも改善して引き継ぐ。そのための策を立てなければいけないと思っています。本館の建て替えも、大きなテーマのひとつだったんです」

 調理部長の陳一明は、これからの経営の難しさを心配する。

 「『早く後継者が来ないと潰れちゃうよ』と言っています。いつまでも今の社長が働くわけにはいかない。横浜中華街も変わってきているし、ホテルもレストランも工場も、フランチャイズも見なくちゃいけない。しっかり経験を積んでから引き継がないと、簡単にバトンタッチするのは危ない。社長がバトンを受けたときとは時代が違います」

 これからは混沌とした時代を生きていかなければならない。

 「人口は減る。高齢者は増えるが、労働力は足りなくなる。人件費が上がる。潰れる会社が増える。厳しい時代になります」

 宏道も分かっている。心配もしている。しかし、焦ってはいない。そして、事業承継の前段階として、1年ほど前から毎月の収支を為娜にメールで送信し、龍門グループの積極的な展開をフェイスブックでシェアしている。

 「日本語なので、グーグル翻訳で見ているようです(笑)。日本語には苦労するでしょうね。彼女がやりやすいように準備しているだけです」

本社は日本じゃなくてもいい

 宏道は広く大きな視点で考えている。

 「彼女の今のネットワークを生かして、本社を日本じゃなくてシンガポールに置いてもいいくらいに思っているんです。それでも構わない。事業所のひとつに横浜があって、アジアの拠点にシンガポールがあって。それこそ私の夢でもありますから」

 龍門グループがアジア、さらにはアメリカやヨーロッパに進出し、ホテルを買収することも大いにあり得る。「ローズホテル横浜」を運営する会社名は、ローズホテルズ・インターナショナル。複数形であり、インターナショナルが付いているのは、宏道の思いが込められている。

 「だから、今は泳いでいていいんです。ただし入社したら、まずは現場で経験を積んで、龍門グループを中から理解してほしいと思っています」

 楊秀瑛も覚悟している。

 「娘には自覚してもらう必要がありますね。他に継ぐ人がいるのか、ということを。心構えはあるようです。私がフォローしないといけないのは、父親とぶつかったときでしょう。新聞を読むポーズまで、父親にそっくりなんですから(笑)」

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