ゲンスラーは2015年に完成した上海中心大廈(上海タワー)の設計で世界から注目を集めた。世界の名立たる設計事務所が参加したコンペでの勝利だった(写真:Blackstation)

 昇り龍の如く、ガラスのカーテンウォールが螺旋を描いて空に伸びる姿を「ドラゴンタワー」と例える人もいる。2015年に完成した地上632メートルの上海中心大廈(上海タワー)のことだ。設計したのは米国の設計事務所、ゲンスラー。このニュースは世界を驚かせた。1965年に創業したゲンスラーは、「インテリアに強みを持つ設計事務所」という印象が強かったためだ。

 ゲンスラーは、連載3回目で紹介した英フォスター・アンド・パートナーズや、米KPF(コーン・ペダーセン・フォックス・アソシエーツ)など、世界の名だたる設計事務所が参加したコンペで、強豪を抑えて「中国一高いビル」の設計者に選出された。

 では、どうやってインテリアデザインから始め、超高層ビルまで設計できる能力を身に付けたのか。世界トップクラスの設計事務所の仕事場を、建築雑誌「日経アーキテクチュア」が編集した『名建築が生まれた現場 世界のトップ設計事務所』から5つ選んで取り上げる連載の第4回目。今回は急成長を続けるゲンスラーの経営に迫る。

数十人で始めた上海タワーのプロジェクトは、様々な分野の専門家を世界各地のオフィスから集め、開始から3年で150人を超える規模に拡大した(写真:Connie Zhou)

 ゲンスラーは現在、世界46拠点に5000人のスタッフを擁する。これがどれほどの規模か説明しよう。日本最大、世界有数の日建設計はグループで2547人だ。その2倍近い陣容ということだ。リーマンショック前の2008年には約3500人が在籍していた。人員整理で一時は約2800人に減少したが、現在は米国や中国での事業拡大を受けて攻めの経営に再び舵を切っている。

 急成長の経営を探るべく、創業の地である米西海岸のサンフランシスコオフィスを訪ねた。海沿いに建つビルの周囲は、IT大手のグーグルや衣料メーカーのギャップなど、誰もが社名を聞いたことのある米国企業が集まる一等地だった。

サンフランシスコ湾沿いの一等地にあるオフィス。周辺にはIT大手のグーグルや、衣料メーカーのギャップなど米国発の世界的企業のオフィスが集まっている(写真:林 幸一郎)