サンフランシスコの金融街変える“空港級”プロジェクト

米西海岸の都市、サンフランシスコの金融街で老朽化した公共交通機関のターミナル駅を改修する「トランスベイ・トランジットセンター」計画のパース(資料:ペリ・クラーク・ペリ・アーキテクツ)
2万平方メートルを超える屋上には土が盛られて緑化される(資料:ペリ・クラーク・ペリ・アーキテクツ)

 PCPAは現在、米西海岸の都市サンフランシスコを大きく変える巨大プロジェクトに挑んでいる。金融街の近くで老朽化したトランスベイターミナルを建て替える「トランスベイ・トランジットセンター」計画だ。2017年に完成予定の新ターミナルは、公共交通機関の軸となる。近郊を走るバスや電車が乗り入れ、サンフランシスコ周辺の中核都市を鉄道で結ぶ。将来的にはカリフォルニアの南北を結ぶ高速鉄道のターミナル駅となる予定だ。

ターミナルビルは地下2階・地上3階建てで2017年に完成予定。全長は長手方向に450m、短手方向に52mの巨大建築物となる(資料:ペリ・クラーク・ペリ・アーキテクツ)

 トランスベイ・トランジットセンターのターミナルビルは地下2階・地上3階建て。全長は長手方向に約450m、短手方向に約52mに及ぶ。屋上は2万平方メートルを超える公園となる。花や樹木を植え、ビオトープを設けてビル群の真ん中に空中庭園を整備する。工事に携わる現場スタッフは「オフィス街に新たに空港をつくるような巨大プロジェクトだ」と説明する。

サンフランシスコ市の区割りで3街区にまたがるターミナルビルは幹線道路の上をまたいで建てられる(写真:日経アーキテクチュア)

 高層ビル群に囲まれた鉄板むき出しの屋上階の工事現場を歩くと、空間が広大過ぎて建築物の上に居るという事実を忘れてしまう。建設中のターミナルビルを見学するには2時間が必要だった。長手方向は北東から南西にかけて3街区にまたがる。隣接する高層ビルから見下ろして撮影しても、建設現場の全景を収めることができなかった。

白い金属性ルーバーで建物の周囲を覆う。金融街周辺は危ない地域というイメージだったが、白い壁面の連続が街の雰囲気を明るくする(資料:ペリ・クラーク・ペリ・アーキテクツ)

 トランスベイ・トランジットセンターは、幾何学模様が連続する白い金属性ルーバーが波打つように建物の周囲を覆う。平滑なカーテンウオールで構成されることが多い従来のペリ氏の建築とは印象が大きく異なる。ペリ氏の新たな挑戦だ。

 ペリ氏は日本の若い建築家に向けて語る。「現代は日本でも米国でも、国による建築の特色を識別することが難しくなってきている。しかし、建築家はそれぞれの国の持つ課題を注意深く観察し、その違いに対峙するべきだ。変化は常に起こっている。だから建築家も実務を通じて変化し続けなければいけない」

 PCPAの建築に決まった意匠はなかった。しかし、創業者の働く姿勢から哲学を「伝承」したスタッフたちが、建築を新たな地平に進化させていく。

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