スタイルをつくらず、顧客の要望をスタイルとする

事務所の通路に沿って並ぶ模型群には「愛宕グリーンヒルズMORIタワー」があった

 世界的なブランドには通常、他社と差別化するための特徴がある。アパレル然り、自動車然りだ。建物をデザインする設計事務所は特に、一目で分かるような特徴を持たせる。それがブランド力になるからだ。しかし、PCPAには「これはPCPAの作品だ」とすぐに分かるような設計のスタイルがない。

共同創業者のフレッド・クラーク氏は、クライアントの要求を高い次元で満たすことが意匠よりも大切だと考える

 PCPA共同創業者のフレッド・クラーク氏は「押し付けるような意匠は重要ではない。大切なのはクライアントの要求を高いレベルで実現することだ」と説明する。PCPAがプロジェクトを担うに当たって守るルールは3つ。1つはクライアントへのサービスを徹底すること。そして、設計した建物が周辺環境に与える影響に責任を持つこと。最後にクライアントにできるだけ多くデザイン的アプローチを示すことだ。

 これはペリ氏の哲学でもある。ペリ氏は若い頃に建築家のエーロ・サーリネン氏の設計事務所で働いた。この時、1つのプロジェクトに対してできるだけたくさんの模型をつくることを学んだ。「2次元では分かりにくい設計も3次元にすると、クライアントにも分かりやすく伝わる。こうした姿勢はクライアントに対して献身的に働くという態度につながる」とペリ氏は話す。

1つのプロジェクトでも時には何百という習作模型をつくってクライアントの望む形を探っていく

 一方、PCPAはクライアントとの交渉では報酬に厳しい。その役割を担うのはクラーク氏だ。賃金面でスタッフにしわ寄せを被らせるようでは、会社として設計事務所が成り立たない。だから、報酬に関しては正当な価格を求めて厳しく交渉する。強気でクライアントに臨めるのは、サービスに絶対の自信を持っているからだ。

 クラーク氏は「PCPAは注意深くクライアントを選ぶ」と話す。それ故に進行中のプロジェクト数はそれほど多くはない。特別にマーケティングを仕掛けて新しいクライアントを発掘することにも積極的ではない。1つのクライアントと長く仕事をする。それが信頼を醸成してクライアントとの関係を深める秘訣だという。

 例えば、日本では森ビルと長くビジネス関係にある。クライアントと何十年も続く関係を築くことで、より深く彼らの本当に求める設計を理解する。満足のいくビジネスを成功させることで、クライアントが別のクライアントに口伝えでPCPAの良さを広げてくれる。「1社のクライアントを幸せにすることが、何よりのマーケティングになる」(クラーク氏)