仕事を通じてプロになる「学びや」としての職場

「事務所は学びや」とシーザー・ペリ氏は語る

 ペリ氏は職場を教育の現場と考えている。自身が創業した設計事務所について聞くと、「学びやのような場所であるべきだ」と説明する。プロの建築家として働く前には、誰もが大学などで建築の基礎を学ぶ。だが、学問は学問。現実の建築ではないとペリ氏は考えているのだ。

 実践的な建築技術はプロジェクトを通じて学ぶべきもの。「例えば、災害に対応できる建物を設計する場合、大学の授業の知識だけでは不十分。建築家としての訓練は実際の仕事を通じて行うほかにない」とペリ氏は語る。

 学びやとしての職場。それは理念だけではない。仕組みとしてPCPAは経営に取り入れている。例えば、古参のスタッフたちには特徴がある。プロジェクトチームをけん引する「プリンシパル(設計チーム責任者)」には、イエール大学などでペリ氏が受け持った教え子が多いのだ。かつての生徒たちは今日も仕事を通じて「建築家とは何か」を学び続けている。

経営組織はシンプル。プリンシパル(設計チーム責任者)が得意分野のプロジェクトを率いる。プリンシパルは学生時代にペリ氏に師事した人材が多い(資料:ペリ・クラーク・ペリ・アーキテクツの資料をもとに日経アーキテクチュアが作成)

 PCPAの組織はシンプルだ。

 経営の中核にはペリ氏をはじめとした3人の経営パートナーが据わり、バックヤードを支える経理や人事などの組織を統括する。プリンシパルは得意分野のプロジェクトを率いる。6人のプリンシパルのうち4人がペリ氏の教え子だ。誰にどのプロジェクトを任せるかという人選は、教え子だった時代から適性を見てきたため、能力においても責任感においても自信を持って行える。

 2005年にプリンシパルに昇格したマリコ・マスオカ氏は1980年に入所して以来、研究機関を中心に設計の経験を積んできた。2015年11月に開校したシンガポールのイエール・NUS(シンガポール国立大学)大学の設計で指揮を執るなど、国際的なプロジェクトにも数多く関わってきた。マスオカ氏はPCPAで果たした功績が高く評価され、2014年には米コネチカット州のウーマンズ・ホール・オブ・フェイム(女性の殿堂)に登録されている。

プリンシパルの1人としてアジア地域などのプロジェクトを牽引するマリコ・マスオカ氏。2014年に米コネチカット州のウーマンズ・ホール・オブ・フェイム(女性の殿堂)に登録された

 米国では貪欲な若い建築家が収入や責任を求めて、幾つもの設計事務所を渡り歩く例が少なくない。PCPAでは建築家として大志を持つ人材は、責任を持って育てる環境が整っている。

ペリ氏は「私は良い建築家であると同時に、良い先生であり続けたいと願っている」と話す。