マレーシアの首都クアラルンプールに建つ「ペトロナスツインタワー」、中国・北京の情報発信基地となる「中国中央電視台(CCTV)本部ビル」、日本では世界の玄関口となる「関西国際空港旅客ターミナル」――。都市や、ときには国家のランドマークにもなる名建築をデザインするのが世界の一流設計事務所だ。
設計事務所の人員は、数人から数千人まで規模もビジネススタイルも千差万別。小さな事務所が大手を打ち負かして指名されることも珍しくない。要は、クライアントを納得させられるかどうか。その点では普通のビジネスと変わらないが、面白いのは、完成品の建物に、設計事務所の個性が、哲学が見えることだ。
優れた設計事務所は、その経営にも一流の哲学がある。その成果である建築はいわば「見える経営哲学」だ。そして、設計図を生み出す事務所のオフィスに行けば、より色濃く、彼ら彼女らの哲学を見て取ることができる。
建築雑誌「日経アーキテクチュア」では、海外の超一流の設計事務所の仕事場を紹介する『名建築が生まれた現場 世界のトップ設計事務所』を発刊(9月5日)した。編集部の江村英哲と菅原由依子の2人が、設計事務所の現場を歩き、彼らの考え方や働き方を見聞し、写真に収め、オフィスの雰囲気をイラストで伝えている。オフィスツアーを疑似体験できるように意識した。スタッフの息遣いまで書き込まれたイラストから、働く人々の会話を想像していただければと思っている。
本連載では、その中から5つの設計事務所を、その経営哲学を象徴する言葉を切り口にして、ビジネスパーソン向けにご紹介する。
第 1回は、オランダの建築家、レム・コールハース氏が率いるOMA(Office for Metropolitan Architecture)のニューヨーク(NY)オフィスをご紹介しよう。この設計事務所のキーワードは「挑発」。たとえば、これだ。これが何の建物か、お分かりになるだろうか。

答えは中国のテレビ局。北京で2012年に竣工した中国中央電子台(CCTV)の本部ビルだ。

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