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米空母「カールビンソン」と並走する、護衛艦「あしがら」と「さみだれ」(写真提供:Mass Communication Specialist 2nd Class Sean M. Castellano/U.S. Navy/ロイター/アフロ)

 護衛艦「いずも」の空母化、敵基地攻撃能力の導入、ミサイル防衛システムの強化、次期戦闘機の開発体制、サイバー/宇宙/電子戦対応、クロスドメイン――。

 政府は12月18日にも、「防衛計画の大綱」(以下、防衛大綱)と中期防衛力整備計画(以下、中期防)を改定し閣議決定する。これをめぐって、以上の政策が議論の俎上に載っている。防衛大綱は今後10年にわたる防衛力の基本的指針を定めるもの。防衛省は「わが国の平和と安全を確保するグランドデザイン」と位置付ける。中期防は、大綱に基づき、今後5年間の防衛費の見積もり額や必要となる防衛装備品の数量などをより具体的に明記する。

 冒頭に挙げた政策はいずれも重要だ。ただし日本の防衛政策は、日本自身が取り組む防衛力強化と並べて、日米同盟を重視する。日本自身の取り組みは自ずと日米同盟の在り方の影響を受ける。そして今、この同盟が持つ信頼性を不安視する声が大きくなっている。「我が国に対する武力攻撃があった場合、日米両国が共同して対処する」(日米安全保障条約第5条)--この約束は本当に実行されるのか。日米同盟を再評価し、これに対する姿勢を吟味しなければ、上記の政策を腰を入れて議論することはできない。

 加えて、ヒトとカネ、技術に関する議論が欠かせない。ミサイルや戦闘機のように目立つ存在ではないが、日本の防衛を支える重要な柱だ。これらに対しても十分に議論し、国民に現状を知らせ、選択肢を示す必要がある(後編で詳述)。

揺れる日米同盟の信頼性

 防衛大学校教授を務めた孫崎享氏は「日米同盟が機能せず、日本が他国から攻撃を受けても米国が来援しない状況を考えておくべき」と指摘する。その理由の一つは、日米安全保障条約そのものが持つ構造的なものだ。第5条は、「共同対処」は「自国の憲法上の規定に従つて」行うと定めている。そして米国憲法は宣戦布告権を米議会に持たせている。選挙民の意向に敏感な米議会が日本を支援する戦争の開戦を支持する保証はない。

日米安全保障条約 第五条
各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宜言{宜はママ}する。

孫崎 享(まごさき・うける)
1943年生まれ。1966年東京大学を中退し外務省に入省。駐ウズベキスタン、国際情報局長、駐イラン大使を歴任。その後、防衛大学校教授を務める。著書に『日米同盟の正体』『情報と外交』など。(写真:菊池くらげ)

 米トランプ政権が進める不透明なアジア政策が、この状況に拍車をかける。米国が、北朝鮮が進める核・ミサイル開発をめぐって同国と妥協するシナリオが依然として消えないからだ。「日米離間を図る北朝鮮が、米本土を射程に収めるICBM(大陸間弾道弾)の開発凍結を提案する。米国がこれを受け入れ、北朝鮮による核兵器保有を事実上容認する」。この妥協は日本にとって最悪だ。日本を射程に収める中距離核ミサイルは米朝合意の対象に含まれないからである。米国に及ぶ核の脅威はなくなっても、日本に対する脅威は現状のまま残る。

 さらにドナルド・トランプ大統領は6月の米朝首脳会談の後、在韓米軍を撤退させたい意向を表明した。欧州でもNATO(北大西洋条約機構)加盟国に対する防衛義務を疑問視する発言をしている。日本も“同盟軽視”の対象にならない保証はない。

 「米国は、アジア太平洋地域へのリバランス政策に基づき、我が国を始めとする同盟国等との連携・協力を強化しつつ、当該地域への関与、プレゼンスの維持・強化を進めている」。2013年に閣議決定した現行の防衛大綱はこう記述している。オバマ政権時代のこの認識は、トランプ時代に通用するのか。