米国との貿易摩擦を解消する手段としてイージス・アショアを導入したという見方があります。それが本当かどうかはわかりません。しかし、防衛装備の整備に政治が影響しているとしたら、これは懸念すべき事態です。

対中国で見た時、盾の役割を果たすための装備は十分でしょうか。

福山:こちらは十分な状態にすることはできないでしょう。中国の軍事予算の伸びを考えた時、軍事力でパリティを維持するのは現実的ではありません。

 ただし、領域警備法を制定するなど、できることはあります。2015年9月に民主党と維新の党で、領域警備法の案を共同提案しました。尖閣諸島をめぐる事案ではまず海上保安庁が対処する、必要に応じて自衛隊に対処を引き継いでいけるようにすることで、抑止力を保つよう狙ったものです。

 そして、足りない部分は日米同盟で補う。2010年に尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の監視船に衝突する事件が起きた時、ヒラリー・クリントン国務長官(当時)が尖閣諸島を適用範囲であることを認めました。

だとすると、有事の際に米国が約束通り矛の役割を果たしてくれるよう担保する措置が重要になりますね。安倍政権は集団的自衛権を限定行使できるようにすることがその措置だとしています。福山さんはこれには反対ですよね。別のアイデアがありますか。

福山:集団的自衛権を限定行使できるようにしましたが、これで果たして、米軍の来援を担保できているでしょうか。できてないでしょう。憲法解釈を変え、安保法制を強行採決までしましたが、担保できていないのです。

 ただし、日米安保条約は厳然として存在しており、抑止力として働いているのも事実です。これを確実なものにするには、やはり、盾の役割をしっかり果たすことだと思います。個別的自衛権の範囲で、専守防衛をしっかりやる。

トランプ政権の不確実性を軽視してはならない

冒頭で、トランプ政権の不確実性に触れられました。これを説明していただけますか。

福山:周辺事態法を重要影響事態法に改め、日本は重要影響事態において、地理的な制約なく、米軍に後方支援を提供できるようになりました。だからといって、あえて、日本の側から米国に一体化を求めることはすべきでないということです。

 専守防衛、集団的自衛権は行使しない、というこれまでの日本の安全保障政策を逸脱することになりかねないからです。

イスラエルとイランの関係がさらに悪化し、中東で軍事紛争に至る可能性が否定できません。その時に、日本に後方支援などの要請が来る懸念がある。

福山:そういうことも考えておくべきだと思います。もちろん、一概に、日米同盟をないがしろにしてよいとか、トランプ政権と距離を置くべきだ、と言っているわけではありません。

F-Xの自主開発は日本の技術力に懸念

最後に防衛装備品の海外移転についてうかがいます。政府は、25大綱を閣議決定した後の2014年4月に防衛装備移転三原則を策定し、移転を認める条件を明示しました。この点も次の大綱で触れる大きなトピックになると考えます。移転を認める動きは、民主党が政権にあった2011年11月に出した藤村官房長官談話が起点でした。

福山:防衛装備の海外移転は抑制的に運用すべきと考えます。殺傷能力のある武器ではなく、海難救助艇などが対象として適切ではないでしょうか。今、US-2の話が進んでいますね。

 関連してF-X(次期戦闘機)については、日本の主力企業が中心となって、海外と共同開発するのが現実的な解だと思います。

現行の支援戦闘機「F-2」の後継として、2030年をめどに導入することになっている次期戦闘機ですね。日本による独自開発、外国との共同開発、外国からの輸入の3つの選択肢が想定されています。

福山:共同開発を考える理由は3つあります。1つはトランプ政権。貿易赤字を解消する一環で米国製の購入を強く求める可能性があります。2つ目は、サイバー戦や電子戦を考えた時、海外企業が持つ知見を生かすのが合理的であること。そして3つめは日本企業の技術力に対する懸念です。残念ながら日本の製造業の力が以前より落ちている現実を直視する必要があります。