例えば、核・ミサイルを保有しているのは北朝鮮だけではありません。いま地上配備型ミサイル迎撃システム「イージスアショア」が注目されています。世界を見渡すと、現在、これが配備されている、もしくは、されつつあるのはポーランド、ルーマニア、米アラスカ。周辺の国に対して弾道ミサイルの脅威を与えている国の存在を示唆していると言えるのではないでしょうか。

 中国の動きも懸念されます。一帯一路構想を進める中で、返済しきれないほどの額をあるいは高金利で貸し付け、返済不能に陥った場合には、その代償として長期にわたる港湾の使用権を獲得する動きが進んでいます。また南シナ海の人工島埋め立てと軍事基地化、これはオバマ政権が戦略的忍耐の方針の下で何もしなかったことがもたらした結果とも考えられます。

 また、「アリペイ」が世界中に普及しつつある。電子商取引サイトを展開する中国のアリババ集団が運用する決済サービスです。決済の履歴--誰が、いつ、どこで、何を買った、のほか、病歴や服用している薬まで--が中国共産党に様々な情報が集約されている懸念があります。こうした状況にも目を光らせる必要があります。

統幕で陸・海・空に加え、宇宙・サイバー・電磁を束ねる

いま、ネット決済の話に触れられたので、サイバー防衛についてうかがいます。自民党の国防部会長として「新たな防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画の策定に向けた提言」を5月にまとめられました。この中で、「宇宙・サイバー・電磁スペクトラム戦を担う統合部隊の創設を検討する」とあります。これは、陸・海・空の3自衛隊に加えて新たな部隊を創設するのですか。

若宮:はい、そのイメージです。宇宙・サイバー・電磁スペクトラムの3つのドメインはこれから一層重要になり、どの国も力を入れています。ここで起こる変化によって陸・海・空の3自衛隊の運用も大きく変わっていくでしょう。

 この3つのドメインで起こることを一元的に対処する必要があります。日本が他国から攻撃される場合、まず狙われるのはレーダーや哨戒機です。こちらの「目」を見えなくしてから、ミサイルや戦闘機や艦船が攻撃してくる。したがって、レーダーの機能を無効にするための電磁波攻撃を想定する必要があります(電磁スペクトラム)。

 今の時代の目はレーダーや哨戒機に限られません。衛星が撮影する映像も重要な目になっています(宇宙)。そしてレーダーや衛星を使って得た情報を戦闘機や艦船に知らせる通信ネットワークに対する妨害が図られる。通信ネットワークは様々な電子機器で構成されており、これらも攻撃対象となります(サイバー)。

 この統合部隊には自衛隊の制服組だけでなく、民間の専門家も登用する必要があります。専門家は自衛隊だけで集められるものではありません。かつては制服組(自衛官)と背広組(防衛省の職員)との間に溝があることが指摘されていましたが今ではUC混合で改善されています。官と民を分ける垣根を取り払う作業もさらに進めた方が対応しやすいと考えております。

いつ、どの程度の規模にするか、目標はありますか。

若宮:予算や人員の問題がありますから具体的な目標は敢えて掲げてはいません。しかし、これはすでに取り組んでいなければいけないことなので提言に盛り込みました。

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