ミッドコースでの迎撃は、すでに海自がイージス艦の増強を進めています。なので、THAADを導入したほうがより広い高度レンジで対応できるようになる。軌道のどこにあるミサイルでも日本は迎撃する意思があることを、相手国に示すことができるわけです。日本に対して弾道ミサイルで攻撃しても無効なのだと知らしめる。

中期防でイージスアショアに触れるべきでしょうか。

小原:すでに導入を決定しているので、必要ないかもしれません。言及するとすれば、「北朝鮮は完全な非核化を約束したものの具体的な動きはない。その一方で、国連決議に反して核開発を継続しているとの情報もある。非核化が現実のものとなるまでミサイル防衛システムの強化を緩めてはならない」という具合でしょうか。

F-X(次期戦闘機)についてはどうでしょう。現行の支援戦闘機「F2」の後継として、2030年をめどに導入することになっています。日本による独自開発、外国との共同開発、外国からの輸入の3つの選択肢が想定されています。

小原:私は、F-Xに限らず共同開発が主流になっていくと考えています。単独で武器を開発できる国は減ってきており、現在は米国くらいでしょう。その米国でさえ、自衛隊が現在導入を進めている「F-35」は共同開発にしました。

 また日本が外国と安全保障協力をするうえで、防衛装備品の共同開発は有効な手段になっています。日本は軍事行動で協力するのは難しいですから。その一方で高い技術力を持っています。

 日本が安全保障分野で協力できる国は米国にとどまりません。例えばフランスが日本の存在を見直し始めています。フランスはニューカレドニアなどアジア・太平洋地域に海外領土を有しており、中国が軍事力を強化するのに危機感を抱いいる。この地域での安全保障協力を考えなければならない。米国がトランプ政権になったこともあり、日本への注目を強めているのです。

英国も再びアジアへの関心を強めていますね。

小原:東南アジアの諸国と協力できるケースも増えていくと思います。

F-Xについて、大綱・中期防には「日本が主導できる共同開発が好ましい」という書きぶりになるでしょうか。

小原:そうですね。

日経新聞が8月23日の朝刊1面でF-Xの動向を取り上げました。米防衛大手のロッキード・マーチンがF-XとしてF22*8の改良版を防衛省に提案し、日本企業と開発・生産を分担すると申し出たという内容です。小原さんはこれを読まれて、どのような感想を持ちましたか。

*8:米ロッキード・マーチンが開発したステルス戦闘機。自衛隊はF4EJ改の後継機として検討したが、米議会が輸出を認めなかった。このためF35Aの導入が決まった経緯がある
米ロッキード・マーチンが開発した「F22」。「米空軍史上最高の戦闘機」の異名を取る

小原:中国の開発手法を理解して進める必要がある、ということですね。日米の開発手法は非常にち密、かつ計画的です。必要な性能要目をきっちりと決め、それを実現する技術を組み込んで設計する。そして改良の時期が来るまで、同一仕様のものを使い続けます。

 一方、中国の開発はもっと粗っぽく、かつ柔軟です。例えば機体にフィットするエンジンがなくても、むりやり取り付けて飛ばしてしまう。しかし、改良も早い。同型の2番機を作るときには修正を加えます。新しい電子機器が開発されれば、それをすぐに採用する。常に最新の技術を適用するのです。

 中国が国産し部隊配備を始めたステルス戦闘機「殲20(J20)」は、今のところF22に性能面で圧倒的に劣るかもしれません。しかし、最新のJ20が、仕様が固定されたF22の性能を超える時が来るかもしれません。

予算を大きく増やす必要はない

最後に予算についておうかがいします。大綱・中期防で予算についてはどう触れるべきでしょう。三木武夫内閣が1976年に「当面、(防衛費は)国民総生産(GNP)の100分の1に相当する額を超えない」と閣議決定して以来、この方針がおよそ守られてきました。しかし、イージスアショアをはじめとする高価な防衛装備の導入が予定されています。トランプ政権は、NATO加盟国に対し「防衛予算をGDP(国内総生産)比2%に引き上げる」約束を守るよう強く求めています。日本にも同様の要求をしてくるかもしれません。

小原:「GNP比1%」枠について大綱・中期防で触れる必要はないと思います。また、トランプ政権が増額を求めてきたから予算を増やす、というものでもないと考えます。防衛費の額は本来、〇〇のレベルの防衛力が必要、そのためには〇〇の装備が必要で、それにはいくらかかる、というのを積み上げて決めるべきです。

 現在の防衛費の予算を大きく増やす必要はないと思います。社会保障などに大きな予算が必要な今、国民のコンセンサスを得るのは容易ではないでしょう。

 先ほどお話ししたように必要な装備品をそろえる取り組みは正しい方向で進んでいます。今は、それを十分に活用できるよう、部隊配備や運用力を高める時期です。これが現在の自衛隊が抱える根本問題です。