同盟調整メカニズムを生かせ!

具体的には日米同盟をどのような形にするべきなのでしょう。

小原:自衛隊と米軍がより緊密に協力できるようにしていくべきだと思います。同盟調整メカニズム(ACM)を具体的に動かして有効なものにしていく。

同盟調整メカニズムは、平時から緊急事態までのあらゆる段階で、自衛隊または米軍が取る行動について、政策と運用について日米間で調整をする仕組みですね。2015年に改訂されたガイドライン*3で導入されました。

 いくつかの会議で構成されています。日米安全保障協議委員会は日米の外務相、防衛相が参加するもの。その傘下の防衛協力小委員会には、日本からは外務省北米局長と防衛省の防衛政策局長、米国からは国務次官補や国防次官補が参加します。さらに自衛隊の代表と米太平洋軍、在日米軍の代表が会する共同計画策定委員会などがあります。

*3:正式名称は「日米防衛協力のためのガイドライン」。日米両国の役割と任務、協力と調整の在り方について、一般的な方策と政策の方向性を示すもの

小原:はい。特に共同計画策定委員会は日常的に、訓練の時にも生かしていく必要があるでしょう。

 同盟調整メカニズムを生かすために、日本側は常設の統合司令部を整えねばなりません。統合任務部隊(JTF)という統合司令部を事態に応じて作ることができますが、常設ではありません。

統合任務部隊は東日本大震災の時に設置されましたね。陸上自衛隊(以下、陸自)の君塚栄治・東北方面総監(当時)がJTF東北の司令官となり、その下に海上自衛隊の横須賀地方総監と航空自衛隊の航空総隊司令官が加わる形を取りました。

小原:その通りです。しかし、災害対策だけでなく、軍事作戦に関する統合司令部を常設にする必要があります。そうでないと、平時から有事にかけて米軍と連続的に効果的な協力をすることができません。

 さらに自衛隊の組織の在り方、グレーゾーン事態*4への対応の観点からも常設の統合司令部を設置するのが有効です。組織の在り方として、参謀と指揮の機能を明確に分けるべきです。今は統合幕僚長(以下、統幕長)が、首相と防衛相を補佐する参謀の機能と、自衛隊の部隊を指揮するトップの機能を両方担っています。二つの機能を同時に十分にこなすのは容易ではありません。

*4:有事とは言えないが、警察や海上保安庁の装備では対応しきれない事態

 官邸に入るであろう統幕長に代わって、統合幕僚副長がオペレーション・ルームで指揮をとることになっていますが、副長もまた指揮官ではないのです。

 平時から統合司令部が存在していて、情報を収集していれば、グレーゾーン事態から始まるハイブリッド戦にも対応しやすくなります。ハイブリッド戦とは、軍同士の衝突に先立って、もしくは同時に、サイバー攻撃やテロ、民間の騒擾を起こし、社会を混乱に落とし込んで進める戦争です。敵は、政府がその対応に手を取られている隙を突いて、本格的に軍事力を行使する。

 現行の仕組みでは、薄いグレーの段階で自衛隊が関与することはありません。この状態を改め、常設の統合司令部を設置し、平時から作戦を立て、米軍とどう協力するのかを協議しておくのです。事態が起きてから、事態認定をし、統合任務部隊を設置し、作戦を立てていて、はたして間に合うでしょか。東日本大震災の時は、JTF東北の司令官が決まるまで3日を要しました。

「抑止」と同時に「対処」も

 米国が外交政策を変化させたことへの対応に加えて、「対処」を一層重視する方針を示す必要もあると考えます。これまでの大綱・中期防は、各種事態が起きないよう「抑止」することに重点を置いてきました。事態への「対処」*5は「被害を最小限に抑える」とされているだけです。しかし北朝鮮の核・ミサイルの開発が進展するなど脅威が現実になる可能性が増しています。対処にも従来以上に意を払わなければならない環境になっています。

*5:事態が起こった時にどうするか、のこと

 具体的には、どのような部隊編成にすれば機動力を最も高められるかを検討する必要があるでしょう。ハイブリッド戦はいつが始まりか分からない形で始まる。また、相手がコントロールできると思っていても、軍事衝突は、一度起こってしまうと、人がコントロールできない状況にあっというまに進展します。これは歴史が証明するところです。

 日本はすでに統合機動防衛力を高める方針を打ち出しています。これは正しい方向だと思います。例えば海上自衛隊はヘリコプター搭載護衛艦を部隊輸送もできるよう作り変えました。「いずも」型は船体の側面に大きなハッチを付け、大型車両を積み込めるようにしました。「おおすみ」型の輸送艦も保有しています。装備をそろえる方向は間違っておらず、着々と進んでいると思います。

 これらをより一層生かすため、体制や編成を再考するのです。陸自が保有するどの部隊をどこに配置しておくのか、具体的に考えていく。効果的な機動展開ができることで、事態を起こそうとする外国にコストを強要することができます。

 私は、この意味において、航空自衛隊が移動式の警戒管制レーダーを小笠原諸島に配置したことを高く評価しています。これにより「防空の空白地域」を埋め、この地域で活動する外国の部隊を日本の監視下に置くことができます。