実はnioffは医療・介護現場向けに特化した消臭剤だ。日用品売り場などで販売されている一般の消臭スプレーは生活・一般臭気(リビング臭や車内臭など)を対象にしているが、nioffはトイレや生ごみなどの「特定臭気」に対応している。「医療・介護に特化した製品はない。現在代用されている既存の消臭剤は、生活臭用に作られているので匂いを消せず不満だという消費者は多い」(塚本専務)。

ニッチでもシェアを取る

7月から販売しているnioff。1本200mlで1300円。

 前述のように、消臭剤市場は既に成熟し今後の大きな成長も期待できない。これまでのようにただ材料供給を続けているだけでは事業として成長が見込めないのは明白だ。しかし、「市場をよくよく分析すれば、小規模ながらもカバーできていない層があった。それが、医療・介護現場のプロユース向け。他社がやらないならば、自社ブランドで新規市場を作る」(同)。そんな意気込みのもと、2年かけて開発したのが、医療・介護の現場でニーズがある尿臭や便臭に対応した消臭剤、nioffだった。

 nioffの消臭成分は、ニオイ分子の組み換えに効果のある「亜鉛イオン」。ニオイ分子は亜鉛イオンが触れると化学反応によって分解される。分解されたニオイ分子は水とニオイのない分子に組み換えられる(現在特許申請中の技術)。第三者機関の消臭試験によると、便臭の主要因である「硫化水素」の消臭率は10分後で95%、尿臭の主要因である「アンモニア」の消臭率は同75%と高い数字だったという。

 既に京都や奈良の公立病院や老人ホームなどの現場で使用されている。決して巨大市場ではないが、「ニッチでもシェアを取れれば大きい」(塚本専務)。2016年度の販売目標は1.5億円、2017年度は10億円を目指す。

逆転の発想に突き進む覚悟

 日本はこれから、人口減少や少子高齢化が一層加速する。国内に新製品を投入するためリソースを費やすよりは、新興国向けの製品を開発し海外に打って出るほうが商機は大きいと考える企業が大勢だろう。しかし、成熟縮小と見える国内市場も、視線を変えればまだまだ新たな需要を生み出すことができる。パナソニックという大きな看板はあるものの、従業員45人の化学会社、パナソニック化研が「今こそ日本で自社ブランドを」と立ち上がったのもこうした発想や視点の転換があったからだ。

 8月29日号の日経ビジネス特集「今こそ明るい未来予測~先行き不安を吹き飛ばせ」では、逆転の発想を抱き「今だからこそ」と国内に投資する様々な企業の逆転発想シナリオを取材した。大事なのは、逆転の発想シナリオに突き進む勇気と覚悟があるか。国内経済への先行き不安や停滞感が漂う今だからこそ、日本企業の経営手腕が問われている。

当連載は、8月29日号日経ビジネス特集「今こそ明るい未来予測~先行き不安を吹き飛ばせ」との連動企画です。併せてこちらもご覧ください。