時間をかけても変化の必要性を訴える

経営陣が変化への危機感を抱いていても、現場が納得するのは難しいと思います。どのようにして、危機感を全社で共有したのでしょうか。

木村:経営トップは市場や競合の変化をみながら、会社のあり方を変えないといけませんが、個々の仕事をしている人にはそうした変化は見えませんし、そこまで考える必要はありません。なぜ変化が必要なのかという議論を現場まで浸透させるのは難しいですよ。

力づくで変化を迫ることもできたのではないでしょうか。

木村:組織を変えるというのは、会社がディシジョンしない限りは変わりません。ですが、会社を支えているのは社員です。彼らが働く意欲を削ぐのはまずい。決断によって、『右に行け』と言うことはすぐにできますが、8万人の従業員が全員右を向くかというと、個人の事情は異なります。時間をかければいいというものでもありませんが、時間がかからないと、わからないものはあると思います。

ご自身で思い当たる経験はありますか?

木村:私が課長を務めていた時代に、担当していた事業をどう生かすかを一生懸命考えていました。三菱重工がどう生き残るかというのは重要ではありませんでしたし、グローバルの展開をすべきという発想にはなりませんでした。そうした発想は、もっと上の立場になり、責任を持たない限りはわかりません。変化への舵は早く切った方がいいですが、先頭車両だけが舵を切っても、2号車以下が違う方向に向かってしまったら、意味がありません。

かつて木村副社長が担当されていた「機械設備ドメイン」は三菱重工内でも先陣を切って、他社との連携などの改革に取り組んできた印象があります。なぜ機械設備ドメインの改革が必要だったのでしょうか。

木村:事業本部制によって、事業の整理はできましたが、個々の製品がどのようにして生き残るべきか考える必要がありました。特に旧機械設備ドメインはたくさんの商品を抱えるドメインになりました。基本的に考えてきたのは、事業が成長し、そこで働く人間がハッピーになれるかどうかです。周囲には、『持続的に発展する企業を目指せ』と言ってきましたが、それでは新鮮味がありませんよね。そこで、逆は何かを考えました。そうすると、『断続的に衰退する企業』と置き換わります。断続的に衰退すると、投資を絞り、最終的には事業そのものを潰さないといけません。そうなれば、社員や家族、関連会社など多くの人が困ることになります。そうした人たちの幸せを考えると、持続的な発展が使命となります。

木村副社長は機械設備ドメインの改革で旗振り役を務めた
木村副社長は機械設備ドメインの改革で旗振り役を務めた

 発展のために必要な手を考えるために、10年ぐらいのトレンドを調べて、コンサルタントを雇って、競合の動向も調べました。そうすると、今までの延長戦では難しいことがわかり、従来とは違う手を打たないといけないとはっきりと分かる。こうなると、他社と一緒になるという線がでてきます。もちろん痛みは伴います。本当は誰もしたくはありません。ですが、このまま『座して死を待つ』という状況はもっと嫌です。誰かがやらないといけません。他社と一緒にやることは誰もハッピーだと思っていなくても、今までのどん詰まりの状況から夢が開けるかもしれないと思う人が全体の1割か2割いればいいんです。痛みは伴うけれど、バラ色の環境が描けるかもしれないという1つの夢を持てるかが重要です。

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