かつてノルウェーも苦難の時代があった。1960~70年代には数多くの漁師が小型船に乗り、ニシンやタラを根こそぎ取り尽くしてしまっていた。年々海の魚の数は減り、漁師の生活は苦しさを増していった。「ニシン枯渇から学ばぬ日本の漁業」で紹介した日本の状況に似ていた。

 このままではいけない。そこで、政府や漁業販売組合などが中心になって1970~80年代に大胆な改革が行われた。その中心となるのがIQ(個別割り当て)方式と呼ばれる漁獲管理のルール導入だった。

 IQ方式では、一つひとつの船が一年間に漁獲できる上限量が定められる。他の船と漁獲競争をする必要がないので、収益を最大化するためには、1グラム当たりの単価が安い稚魚は避け、脂の乗り切った大きな魚のみを漁獲するように動機づけられる。この方式により、乱獲が抑制され、海の資源維持につながっている。目の前に魚が泳いでいても焦って捕らない。将来の自分たちのために、小さな魚は海に残す余裕が生まれた。

 この方式の運用で一番大切なのは、漁獲量を偽って報告する違反者を出さないこと。そのために、Norges Sildesalgslagは漁獲量を徹底して透明化するシステムを作り上げた。同組合のホームページを見ると、ノルウェー近海での漁獲情報の報告ページがある。そこには、どの漁船が、いつ、どの海域で何トンの魚を捕ったのか。一匹当たりの平均サイズは何グラムか。漁船ごとの詳細な漁獲情報が全世界にリアルタイムで表示されている。

個別船の漁獲情報もホームページ上で開示

 さらに、こうした漁獲情報を基にノルウェーや近隣国の加工業者が参加するネットオークションが開催され、漁船が出航している間に魚の購入業者は決まる。そして、漁船は母港に戻る前に買い手が待つ港へ向かい、水揚げとなる。その時に改めて漁獲した魚の重量をチェックする。

 漁業販売組合のホームページ上では、サバやアジなど魚種ごとに、ノルウェー漁船に割り当てられた総漁獲枠と、現在までに漁獲された量などもリアルタイムでアップデートされている。例えば8月29日時点では、ノルウェー漁船全体のサバの割り当て量は23万7818トン。その時点までに漁獲された量は7109トン。残る枠は23万0709トン。つまりこれから秋冬のサバ収穫シーズンに向けて、多くの漁船が漁獲枠を温存していることが見て取れる。

漁業販売組合Norges Sildesalgslaのホームページからは、どの漁船が何時に何トン魚を捕ったのかといった情報が随時アップデートされる

 さらに船名をホームページ上で打ち込むと、船ごとの割り当て量と今までの漁獲量までが世界中の誰でも見ることができる。